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マードックが狙う英国メディア支配

BスカイBの完全買収に成功すれば、今後10年でイギリスのメディア勢力図が一変する可能性も

2010年10月25日(月)16時14分
ウィリアム・アンダーヒル(ロンドン支局長)

 メディア王ルパート・マードックがロンドンを狙っている。マードック率いる複合メディア企業ニューズ・コーポレーションは総資産540億ドルを誇り、既にタイムズ紙や大衆紙サンを手中に収めている。今度は120億ドルを投じて衛星テレビ、BスカイBの全株式を買収しようというのだ。成功すれば今後10年でマードックがイギリスの新聞・テレビ市場の半分を支配するだろうと、業界アナリストのクレア・エンダースは予測する。

 英メディア各社は珍しく団結し、英政府に買収の阻止を訴えている。マードックが所有する新聞は5月の総選挙でキャメロン首相率いる保守党を応援したかもしれないが、今回の買収をめぐっては政府の援護を得られそうにない。

 理由の1つは、保守党が総選挙で過半数の議席を獲得できず、完全勝利できなかったこと。さらに、買収を認めるかどうかの決定権をビジネス・イノベーション・技能相を務める自由民主党のビンセント・ケーブルが握っていることも大きな壁だ。強硬な規制論者のケーブルは最近、市場原理主義を批判し、「資本主義は『敵』を捕らえて生き長らえさせたりしない。チャンスがあれば殺す」と発言し、物議を醸している。マードックといえども、イギリスの王になる道は険しそうだ。

[2010年10月27日号掲載]

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