最新記事

ネット

究極のiPadアプリ「フリップボード」

ツイッターやフェースブックの必要な情報だけを雑誌風にレイアウトしてくれる「ソーシャルマガジン」が超便利

2010年9月29日(水)15時23分
ダニエル・ライオンズ(テクノロジー担当)

アクセス殺到 フリップボードを初めて無料公開した7月には、20分でサーバーがダウンした Courtesy of Flipboard

 米フリップボード社の本社はこのところとても活気に満ちている。従業員わずか19人の同社は7月に初のiPad用アプリケーションソフト「フリップボード」を無料で提供し始めた。するとダウンロードのアクセスが殺到し、サーバーは20分でダウン。取りあえず利用希望者をウエーティングリストに載せるのが精いっぱいで、希望者全員の登録が終了したのは2週間後だった。「反響は予想を超えていた」と、同社の共同創設者でありCEO(最高経営責任者)のマイク・マキューは言う。

 現在43歳のマキューは今から10年前、電話からの音声で市況や映画情報などを検索できるソフトを作るテルミー・ネットワークス社を創業。07年に同社を推定8億ドルでマイクロソフトに売却した。そんな彼にとっても、このアプリへの反応は「これまで見たことのないものだった」という。

 何がすごいのか。フリップボード社が開発したのは、利用者がフェースブックやツイッター上で友人から得た情報を取り込み、それをマキューが言うところの「世界初のソーシャルマガジン」として表示するツールだ。

カスタマイズされたジャーナリズム

 ツイッター上にある記事へのリンクは小さくて見にくいが、フリップボードではお気に入りの記事や画像などの情報を整理して、雑誌のようなレイアウトで見ることができる。閲覧するには、雑誌のページをめくるのと同じように指先で軽くはじくだけでいい。

 私は映画評論家ロジャー・エバートのツイッターをフォローしているが、エバートはウェブ上の記事や写真へのリンクを次々と発信している。ツイッターで彼の記事を読むためには各リンクをいちいちクリックしなければならず面倒だ。だがフリップボードを使えば、面白くてセンスのある編集者が発行する小型雑誌を購読しているような素晴らしい体験ができる。

 このアプリを使えば、ツイッターから情報を集めている人は誰でも雑誌の管理人になることができる。私たちは、完全にカスタマイズ化されたジャーナリズムの世界へと足を踏み入れつつある。そしてこの変革の担い手は巨大メディア複合企業ではなく、シリコンバレーのちっぽけな一企業なのだ。

 問題があるとすれば、表示されるデータのほとんどがエバートやフリップボードの所有物ではないということ。ほかのウェブサイトからコンテンツを「かき集める」やり方は違法ではないか、とブロガーたちは騒いでいる。

マイクロソフト出身とアップル出身

 だがマキューによれば問題はない。表示しているのは記事の一部だし、リンク先として元のアドレスを組み込んでいるからだ。アプリ公開から4日間のうちにメディア企業150社がマキューに電話をかけてきて、彼との面会やフリップボードの「おすすめリスト」への掲載を希望した。

 マキューのパートナーはかつてアップルのエンジニアだった29歳のエバン・ドールだ。ツイッター上でニュースを読みにくいと感じた2人は「ソーシャルマガジン」のコンセプトを思い付いた。アップルが1月に発表したiPadがソーシャルマガジンにとって理想的な機器だと気付くと、すぐにプログラムの作成を始めた。

 フリップボードはビジネスモデルを確立したわけではないが、記事の隣に広告を表示してウェブ記事の発信元と広告収入の一部を分け合うことを計画している。iPad上でアプリに表示される広告は安っぽいものではない、より「上質」なものになるとマキューは確信している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ当局、エネルギー業界不正取引巡り7人を起

ビジネス

データセンター向け半導体は1兆ドル市場へ、利益3倍

ワールド

米の輸出制限ルール、一時停止後の取り決め協議継続へ

ワールド

シカゴの不法移民摘発責任者、今後は南部地域へ異動か
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ギザのピラミッドにあると言われていた「失われた入口」がついに発見!? 中には一体何が?
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「流石にそっくり」...マイケル・ジャクソンを「実の…
  • 8
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 9
    【銘柄】エヌビディアとの提携発表で株価が急騰...か…
  • 10
    【クイズ】韓国でGoogleマップが機能しない「意外な…
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中