最新記事

展望

中国経済3つのシナリオ

金融危機後に脅威の回復力を世界に見せつけたが、今後はバブル崩壊か、成長維持か、それとも……

2009年11月10日(火)13時23分
ダニエル・ドレスナー(米タフツ大学国際政治学教授)

 昨年秋以降の金融危機は、世界の政治経済にどんな影響を及ぼしたのか。この問いをめぐる議論のなかで、誰もが認める点が1つある。中国にとってはとても良い1年をもたらした、ということだ。

 中国政府は大規模な財政出動と積極的な金融緩和策を打ち出し、輸出税の還付率を引き上げた。その短期的な成果は目覚ましいものだ。アジア開発銀行は9月に発表した報告書で、中国の09年のGDP(国内総生産)成長率を8.2%に、10年の成長率を8.9%にそれぞれ上方修正した。

 雇用の回復も見られる。操業を再開した工場へ流れ込む労働者たちの姿は、失業率が10%の大台へと向かうアメリカとは対照的だ。9月24~25日に米ピッツバーグで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議(金融サミット)でも、中国は気候変動から経済格差まであらゆる問題で存在感を見せつけた。

 この中国の迅速な回復ぶりをどう捉えればいいのか。そして将来的にどんな意味を持つのか。その解釈をめぐっては複数の見方が浮上している。

 1つ目は「成長維持派」。近年の驚異的な成長率から考えると、中国は今後も地政学上の覇者として成長を続けるという見方だ。中国の統制型資本主義は、欧米の多くの専門家の予想を超えて何十年も安定して機能している。

19世紀アメリカとの類似

 政治経済アナリストのザカリー・カラベルは、ニュー・リパブリック誌でこう論じている。「中国経済は崩壊どころか縮小の兆しも見られない。中国の経済政策に疑問を呈する声は多いが、結果がすべてを物語っている」

 中国が今後も成長を続ければ、世界を豊かにする大国としての責務もますます大きくなるだろうと、成長維持派はみている。

 2つ目に挙げられるのは「バブル崩壊派」。中国経済には維持できない不均衡が生じているとみる向きだ。中国経済を牽引するエンジンは輸出産業だ。しかし欧米の消費者が支出を切り詰め、貯蓄を増やしている現状では、エンジンはフル回転できない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミネソタ州に兵士1500人派遣も、国防総省が準備命

ワールド

EUとメルコスルがFTAに署名、25年間にわたる交

ワールド

トランプ氏、各国に10億ドル拠出要求 新国際機関構

ワールド

米政権、ベネズエラ内相と接触 マドゥロ氏拘束前から
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 2
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で国境問題が再燃
  • 3
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」も子に受け継がれ、体質や発症リスクに影響 群馬大グループが発表
  • 4
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 5
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 6
    「リラックス」は体を壊す...ケガを防ぐ「しなやかな…
  • 7
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 8
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 9
    中国ネトウヨが「盗賊」と呼んだ大英博物館に感謝し…
  • 10
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 6
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 7
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 8
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 9
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 10
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中