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ウォール街

業績回復で「オバマへの献金やめた」?

窮地を救ってくれたオバマ政権と民主党に政治献金を渋り始めた大手金融機関は、おのれの強欲のためついに身を滅ぼすかもしれない

2009年10月22日(木)19時07分
デービッド・ロスコフ(カーネギー国際平和財団客員研究員)

オバマ詣で 左から、ゴールドマン・サックスのブランクファインCEO、アメリカン・エキスプレスのシェノルトCEO、バンク・オブ・アメリカのルイスCEO(09年3月27日、ホワイトハウス) Larry Downing-Reuters

 恥の意識とか責任感とかいったものを、ウォール街の人間は持ち合わせていないのだろうか。

 大手金融機関の幹部連中が何をしようと、今さら驚き呆れるほうがおかしいのかもしれない。しょせん彼らは、リスクも知らずに「我々を信頼して全財産を預けてください」と言っていた連中だ。

 アメリカ経済でバクチを打ち、多くの家族から住む家を奪った挙げ句、多額のボーナスを要求する。経営が危うくなると政府の救済を求めてワシントン詣でをするが、助けが必要なくなるとたちまち救世主に背を向ける。

 ちょっと待ってくれ。誰からも相手にされなかった君たちを気にかけ、そばにいて支えてやったのは誰だ? カネも力も失った君たちに、苦しい懐からなけなしの金を与えたのは? 君たちを立ち直らせるために、必死でカネを工面したのは? それなのにちょっと追い風が吹いてきたとたん、他人のような顔をしてさようならというわけか!

 まさにカントリーミュージックやブルース(それも恨み節系の曲)の歌詞に出てきそうな展開ではないか。往年の名歌手、マディ・ウォーターズはこう歌っていた。


ほら自分のしたことを見てごらん 君は僕を残して去った ほんのはした金のために...... その結果を見るといい


カネの切れ目が縁の切れ目

 もちろん私は、ウォール街の王侯貴族たちが心を入れ替えることなど期待していない。アメリカ全体が立ち直るまでのせめて1年か2年、高額のボーナスを自粛しようともしない彼らにがっかりしたわけでもない。

 金融安定化策の趣旨に鑑みて貸し渋りをやめたり、住宅ローンを抱える人々が家に住み続けられるような対策を実施すると本気で思っていたわけでもない。

 もっとリスクに対して慎重になるとか、大きなリスクを他人に押し付けて自分たちだけ利益を得るような投資手法から足を洗うこともないだろう。そんなことを期待するのは、ライオンが草食になってレイヨウの赤ん坊のために保育所を開いてくれたら......と願うようなものだ。

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