最新記事

iPod的>>>21世紀ライフ

アップルの興亡

経営難、追放と復活、iMacとiPad
「最もクールな企業」誕生の秘密

2010.05.31

ニューストピックス

iPod的>>>21世紀ライフ

単なる携帯音楽プレーヤーを超えて文化現象にもなった世紀のハイテクおもちゃ、iPod旋風の衝撃

2010年5月31日(月)12時08分
スティーブン・リービー(本誌ハイテク担当)

 アップルコンピュータのスティーブ・ジョブズCEO(最高経営責任者)は今年、ニューヨークであることに気づいた。「1ブロックに1人は白いヘッドホンをつけている人がいた。いよいよブームが来たなと思ったよ」

 デザイン部門責任者のジョナサン・アイブも、ロンドンで同じような経験をした。「街でも地下鉄でも、みんながいじっていた」

 ミシガン大学のビクター・キャッチ教授(59)は、キャンパスでその現象を目撃した。「3人に2人は持っている気がする」

 話題の主役は、アップルの携帯型音楽プレーヤー「iPod(アイポッド)」。タバコ箱大の兄貴分iPodに続き、今年2月には5色のカラーをそろえた名刺サイズの「iPodミニ」も登場した(日本では7月24日にデビュー)。

 iPodは、今や単なる商品の枠をはるかに超えた存在だ。文化の象徴、ペット、ステータスシンボル、さらには欠かせない「生活の一部」にもなっている。

 300万人強のユーザーにとって、iPodは自分の音楽コレクションをまるごと持ち歩く手段であり、音楽ビジネスの未来を変える新世代リスナーの「身分証」でもある。「私がiPodを使っているのを見ると、学生たちはにっこり笑う。ある種の連帯感が生まれるんだ」と、キャッチは言う。

 この連帯感の源はもちろん、大容量のハードディスクを真っ白なプラスチックで包み、デジタル形式の音楽データを再生する手のひらサイズのコンピュータだ。

美しいデザインに各界のセレブも夢中

 iPodは、デジタル携帯音楽プレーヤーの第1号ではない。しかし、初期の他社製品はデータ容量が少なかったり、大きすぎて使いにくいものばかりだった。その点、iPodは高機能で使い勝手もいい。何よりの魅力は、ほれぼれするほど美しいデザインだ。

 著名人もこぞって賛辞を寄せている。セリーヌ・ディオンなどに曲を提供しているソングライターのデニース・リッチもその一人。「最高! 自分の作品を全部転送して、いつも持ち歩いてる」

 ハリウッドスターのウィル・スミスは、トーク番組や専門誌で「世紀のハイテクおもちゃ」にハマッていると熱く語る。女優のグウィネス・パルトロウも、iPodファンであることを認めている。

 テレビ番組や映画、ミュージックビデオへの登場回数も多い。人気ドラマのプロデューサー、ジョシュ・シュワーツ(27)はFOXテレビから、iPodを連想させる「白いイヤホン」はあまり使わないようにと指示されて憤慨した。「(iPodこそ)僕たちの視聴者が使っていて、登場人物も使うべきアイテムなのに」

 大物デザイナーのカール・ラガーフェルドは、iPodを60台もっている。「音楽をためておくにはこれが一番」と語るラガーフェルドは、自分が主任デザイナーを務めるフェンディから、「愛の証し」として1500ドルの専用キャリングケースを発売した。ピンク色に輝く直方体に、12台のiPodを収納できるすぐれものだ。

 ほかにも外部スピーカーやマイクなど、関連アクセサリーは200種類以上。BMWのハンドルを握ったままでiPodを操作できる専用アダプターもある。

 音楽は人々のハートに訴えるもの。自分の音楽コレクションすべてを持ち歩ける製品(最高1万曲まで保存可能)を買えば、当然愛着も強くなる。多くのiPodユーザーは「プレーリスト」について熱弁を振るい、バッテリー残量に目を光らせ、この新しい「デジタルの友」をなくすことを考えただけでパニックを起こす。

 iPodの使い道は、音楽だけではない。音声再生機能を利用して本を「聴く」ことも可能だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、月の裏側へ無人探査機 土壌など回収へ世界初の

ビジネス

ドル152円割れ、4月の米雇用統計が市場予想下回る

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3

ビジネス

英サービスPMI4月改定値、約1年ぶり高水準 成長
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中