コラム

ついにトランプ弾劾を決意した米民主党(パックン)

2019年10月11日(金)19時10分
ロブ・ロジャース(風刺漫画家)/パックン(コラムニスト、タレント)

Dem Impeachment Push / (c) 2019 ROGERS─ANDREWS McMEEL SYNDICATION

<トランプ自身が「外国の介入」を依頼したウクライナ疑惑の発覚で、及び腰だった民主党もとうとう弾劾に向けて動き出した>

ドナルド・トランプが米大統領選挙に向け、外国の力を借りて政敵の民主党候補をつぶそうとした! そして、その事実を隠そうと情報を隠蔽したり、資料の開示を阻止したりした!

いや、2016年7月にロシアに民主党選挙対策委員会のデータベースのハッキングを呼び掛け、ヒラリー・クリントンのメールをリークしてもらった後、関連の捜査を妨害した話ではない。その行為は既にロバート・ムラー特別検察官が確認した。でも、不思議だね。半年前のムラー報告書公開が大昔のことのように感じる。不祥事のあふれる時間は飛ぶように過ぎるのかな。

僕が言っているのは、今年7月の話。トランプが電話でウクライナの大統領にジョー・バイデン前副大統領と彼の息子に関する捜査を進めるようお願いした後、その電話内容を明かした内部告発者の証言や告発文の議会提示を止めようとしたのだ。トランプってすごいね。「外国による選挙介入の共謀疑惑」も1つに限らない、このスキャンダルのセレクションの豊かさ!

民主主義国家の根幹を揺るがす大問題として、2つの案件は似ているが、今回は民主党の反応が大きく変わった。もちろんエリザベス・ウォーレン上院議員のような例外はあった。彼女はムラー報告書を受けて「弾劾しないと議会も共犯だ」などと断言していた。しかし、民主党の重鎮たちは「弾劾されてもおかしくない」とか「弾劾手続きを始める心の準備を整えるかについての議論をしようかと思っていなくはないけど、取りあえずランチ行くか......」のようなあやふやな回答が多かった。風刺画にあるとおり、民主党のほうが被告であるかのような言い草だった。

だがついに、ナンシー・ペロシ下院議長が9月24日、弾劾手続きを始めると発表した! 1期目の議員7人が弾劾推進の意見記事を新聞に出した後のことで、議長が後輩にリーダーシップを取られているようだけど。

ちなみに、トランプが下院で弾劾訴追されても大統領職に残る確率はほぼ100%。弾劾訴追は起訴に当たるもので、本番の弾劾裁判は共和党が支配する上院で行われるから。そこで3分の2 以上の賛成で有罪になることはまず想像できない。残念ながら、その「共謀」はどうにもならないようだ。

【ポイント】
ARE YOU IMPEACHING THE PRESIDENT?

大統領を弾劾しますか?

IT'S COMPLICATED
それは複雑な話です。

YES?...NO?...MAYBE?...I DON'T RECALL...I REFUSE TO ANSWER ON THE GROUNDS THAT I MIGHT INCRIMINATE MYSELF...
はい?......いいえ?......たぶん?......記憶にありません......自分に不利になる恐れがあるため、お答えしません。

<本誌2019年10月8日号掲載>

20191015issue_cover200.jpg
※10月15日号(10月8日発売)は、「嫌韓の心理学」特集。日本で「嫌韓(けんかん)」がよりありふれた光景になりつつあるが、なぜ、いつから、どんな人が韓国を嫌いになったのか? 「韓国ヘイト」を叫ぶ人たちの心の中を、社会心理学とメディア空間の両面から解き明かそうと試みました。執筆:荻上チキ・高 史明/石戸 諭/古谷経衡


プロフィール

パックンの風刺画コラム

<パックン(パトリック・ハーラン)>
1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『大統領の演説』(角川新書)。

パックン所属事務所公式サイト

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

日経平均は続伸、ハイテク株高で 一巡後は小動き

ビジネス

午後3時のドルは147円前半、米金利低下で上値重い

ワールド

ドイツ、バルト諸国と安保で協力緊密化へ ロシアの脅

ビジネス

フォードの電池工場、従業員が労組結成支持 UAWが
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    「どんな知能してるんだ」「自分の家かよ...」屋内に侵入してきたクマが見せた「目を疑う行動」にネット戦慄
  • 3
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪悪感も中毒も断ち切る「2つの習慣」
  • 4
    【クイズ】1位はアメリカ...稼働中の「原子力発電所…
  • 5
    「ガソリンスタンドに行列」...ウクライナの反撃が「…
  • 6
    「1日1万歩」より効く!? 海外SNSで話題、日本発・新…
  • 7
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 8
    イタリアの「オーバーツーリズム」が止まらない...草…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    「美しく、恐ろしい...」アメリカを襲った大型ハリケ…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 5
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 6
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 7
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 8
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 9
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 10
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 10
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story