コラム

「ハリスの当選確率60%」は本当か?驚異的な勢いの正体は

2024年08月30日(金)12時45分
カマラ・ハリス

ハリスの最大の武器は未知の魅力(シカゴの民主党大会で、8月22日) KEVIN LAMARQUE―REUTERS

<ハリス出馬で予想外の巻き返しに成功した10の理由と、今後は失速する可能性について徹底分析する>

私はこの3年間、大学の学生たちに大統領選についてさまざまな問いを発してきた。イエスかノーかの問いを投げかけて、選挙に関する予測をいろいろ尋ねてきたのだ。

学生たちの回答は、ほとんどの問いでイエスとノーに大きく二分されたが、ある問いではほぼ全員の答えが一致した。その問いとは、「カマラ・ハリスは次期大統領になるか」というものだ。その確率は限りなくゼロに近いと、大多数の学生は考えていた。


しかし、状況が変われば、当然に思えていたこともたちまち変わる。ジョー・バイデン大統領が選挙戦撤退を表明した後、ハリス副大統領は後継者としての滑り出しに成功し、8月20日には民主党大会で正式に党の大統領候補に指名された。ハリスの現時点での当選確率は60%程度に達している。

ハリスが持つ強みと弱み

どうして、ハリスはそれまで選挙戦で劣勢だった民主党に勢いを取り戻し、アメリカ初の女性大統領の座に近づいているのか。その背景には10の強みがある。

◇ ◇ ◇


1)今回の大統領選の特徴は、多くの有権者がバイデンにも、対抗馬であるドナルド・トランプ前大統領にも嫌悪感を抱いていたことだ。しかし、バイデンの撤退により、棄権したり、2大政党以外の候補者に投票したりするつもりでいた有権者に、ハリスという新しい選択肢が生まれた。

2)選挙の結果は、主として候補者間の比較で決まる。これまでは、肉体面でも認知機能の面でもバイデンより健康に見えることがトランプの最大の強みになっていた。しかし、20歳近く年下のハリスと争うことになり、トランプは突如として自身が高齢批判にさらされる側になった。

3)トランプをいら立たせる対立候補として、女性であり、移民の子供でもあるハリス以上の存在はおそらくいない。影響は既に見え始めている。トランプは、ハリスの選挙集会に詰めかける聴衆の人数が気になって仕方がないようだ。

4)大統領選ではたいてい、未来志向のメッセージを打ち出した候補者が勝つ。著述家のデービッド・ブルックスが指摘しているように、この面でのトランプとハリスの違いは、この夏の共和党大会と民主党大会にくっきりと表れている。

トランプを大統領候補に指名した共和党大会は怒りのメッセージであふれていたのに対し、民主党大会は「民主党の女性を信じよう」「一緒に勝利を収めよう」「再び歴史をつくろう」といった前向きのメッセージに満ちていた。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

豪GDP、第2四半期は前年比+1.8%に加速 約2

ビジネス

午前の日経平均は反落、連休明けの米株安引き継ぐ 円

ワールド

スウェーデンのクラーナ、米IPOで最大12億700

ワールド

西側国家のパレスチナ国家承認、「2国家解決」に道=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 5
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 6
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 7
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 10
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story