コラム

組織心理学の若き権威、アダム・グラントに聞く「成功」の知恵

2022年06月11日(土)13時26分

ポトリッキオ 全く異なる価値観の持ち主とうまくコミュニケーションを取るには、どうすればいいのか。

グラント それはとても難しいことだ。本当に難しい! この難題に対して魔法の杖のような解決策があると言うつもりはない。私自身も、この問題に毎日のように頭を悩ませているくらいだ。

自分と極端に異なる価値観の持ち主と話をするときは、相手の視点でものを考えようとはしないほうがいい。相手の考え方を誇張して理解するようになるのがオチだからだ。

私たちのデータによれば、それよりも効果的なのは、自分がほかの環境で生まれ育ったと想像してみることだ。(銃規制に賛成している人は)自分が治安の悪い環境で、銃を所持する権利を重んじる家庭で育ったと想像しよう。(人工妊娠中絶の権利を尊重している人は)信仰心があつく、母親のおなかの中の子供の命を奪うことを正しくないことと考える家庭で育ったと想像しよう。

これらのテーマに関するあなたの考え方は、どのように変わるだろうか。自分が別の時代に生まれたと想像してみることも効果的だ。あなたが150年前の時代に生まれていたら、目の前のテーマに関して異なる考え方をしていたのではないか。

このような想像を巡らせると、人々がある社会集団の一員になっているのは、必ずしも本人の選択の結果とは限らないことに思い至る。ある人がどの集団に加わるかは、どの土地で生まれたか、どのような環境で育ったかといった偶然の要素で決まる場合もある。あなたが今とは別の環境で生まれ育っていれば、その環境で生まれ育ったほかの人たちと同様の考え方を持つようになっていたかもしれない。

このように考えると、思っていたよりも、対立する価値観の持ち主との共通点が多いと気付き、相手のことを以前ほど怖く感じなくなる。

ポトリッキオ どうすれば、権力者が好き勝手な行動を取るのをやめさせることができると思うか。

グラント 権力者の行動を変えさせたいのであれば、その人物が何を大切に考えているのかを知らなくてはならない。その上で、行動の仕方を変えれば、その大切なことをもっと実現しやすくなると納得させる必要がある。サム、もっと具体的に言うと、権力者のどのような振る舞いを変えさせたいのか?

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story