コラム

上院も制したアメリカの民主党。それでも「ブルーウェーブ」は幻だった訳

2021年01月09日(土)16時00分


共和党の有権者は心の中の投票先を世論調査に明かすことに「控えめ」で、エリートメディアが「差別的」と描く党に投票するなど恥ずかしくて言いにくいという説もある。だが私がみるところ、共和党支持者は世論調査に嘘をつくのではなく、エリートメディアの正しさを妨害するため、もしくはエリートメディア全てへの反感から、調査への回答を拒否しているように思う。

最後に、アメリカは中道右派の国であるため、共和党支持が優位なのは自然なことだ。ブルーウェーブが起きるという事前の言説自体が、民主党圧勝に不安を感じた有権者を波の阻止へと駆り立てたのかもしれない。特に、民主党の急進左派勢力が人種差別に対する大規模な抗議行動を起こし、警察への予算拠出の停止を主張したことは、共和党支持者の反発を生んだ。

世論調査がトランプ再選はほぼ不可能と示していたなか、有権者は民主党が政治権力の全てを掌握するのを防ぐため、議会勢力を分裂させようと戦略的な投票行動に出た。民主党の急進左派を最も嫌悪している白人労働者の男性票が、投票日直前に共和党支持に動いたと示す調査もある。加えて、議会選の投票先を選挙当日まで決めていない有権者が40%もいたことが、最後に共和党に大きな追い風をもたらしたのだ。

<2021年1月12日号掲載>

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サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

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