コラム

テレビ討論会で大コケ、それでもブルームバーグが大統領候補になり得る5つの理由

2020年02月25日(火)16時30分

テレビ討論会では精彩を欠いたブルームバーグだが…… MIKE BLAKEーREUTERS

<過去最高の視聴率を獲得した民主党テレビ討論会で、ブルームバーグは大コケした。民主党内だけでなく、トランプの格好の標的にも。それでも彼の「脱落」を語るのはまだ早い>

マイケル・ブルームバーグが離れ業をやってのけた。なんとアメリカを一つにまとめたのだ。

共和党支持者も民主党支持者も、高齢者も若者も、エリート層知識人も勤労者階級も、2月19日の米大統領選民主党テレビ討論会を見た人は誰もが心を一つにして、億万長者で前ニューヨーク市長のブルームバーグを鼻持ちならない男と感じた。

過去最高の視聴率を獲得した民主党テレビ討論会で、ブルームバーグは他の候補者たちから集中砲火を浴びて準備不足を露呈し、いら立ちをあらわにした。巨額の私財をつぎ込んだ選挙CMにより、一部の世論調査で民主党の候補者指名争いで2位に躍り出たものの、今回のテレビ討論会は大失敗だったように見える。

今年の大統領選ではさまざまな予測や分析が示されているが、ブルームバーグが初めて臨んだテレビ討論会で大コケしたという点では、珍しく大半の人の見方が一致している。しかし近年は、アメリカの選挙をめぐる「通説」ほど当てにならないものはない。

実は、ブルームバーグにとって好材料は少なからずある。第1に、ブルームバーグが大金を投じてテレビやラジオ、インターネットに流した選挙CMを視聴した人は、今回のテレビ討論会を見た人の5倍に上る。選挙に及ぼす影響力は、醜態をさらしたテレビ討論会より、選挙CMのほうが大きいのだ。

第2に、ブルームバーグが参戦した途端に全米でテレビ討論会への関心が一挙に高まったことは、彼がテレビスターの資質を持つことを示唆している。現在のホワイトハウスの主も、大統領になる前はテレビのリアリティー番組で活躍した人物だ。

第3に、トランプ大統領はこの日のテレビ討論会以降、ツイッターでもっぱらブルームバーグを攻撃の標的にしている。資産の規模も過去の業績も自分よりはるかに大きく、地元ニューヨークでの人気も高い前市長を強烈に意識しているらしい。トランプは敵の力量を測ることにたけている。彼が大統領選で最大のライバルと位置付けているのは、ブルームバーグだ。

サンダースも盤石ではない

第4に、民主党の候補者選びで現在トップを走っているのはバーニー・サンダース上院議員だが、その座は盤石とは言えない。民主党の予備選でこれまで最有力と見なされたジョー・バイデン前副大統領、エリザベス・ウォーレン上院議員、ピート・ブティジェッジ前サウスベンド市長は、いずれも他の候補者たちから厳しい批判を浴びせられてきた。

その点、今はブルームバーグに批判が集中しているため、サンダースは比較的傷を負わずに済んでいる。しかし、このままでは終わらないだろう。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米中貿易摩擦再燃で新たな下振れリスク、利下げ急務に

ワールド

トランプ氏、習氏と会談の用意 米財務長官 中国「混

ビジネス

シカゴ連銀発表の米小売売上高、9月は+0.5% 前

ビジネス

米BofAの7─9月期は増益、投資銀行業務好調で予
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 2
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 3
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に共通する特徴、絶対にしない「15の法則」とは?
  • 4
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 5
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 6
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 7
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 7
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story