コラム

29歳天才クオーターバックの早過ぎる引退から学べること

2019年09月04日(水)17時00分

私たちは自身のキャリアというレンズを通じて、この決断を分析する必要がある。ラックはスーパーボウルでの勝利と新たな契約に手が届く場所にいた。なぜ栄光と富と名声に背を向けたのか。

ラックは常に私のお気に入りの選手だった。ラックは相手チームのアグレッシブな接触プレーを称賛するなど競争が持つ本当の価値を誰よりもよく理解し、対戦相手が自分のプレーを高めてくれることを知っている。私が専門とするリーダーシップ論でもお手本にしたことがある。

リーダーシップの授業では、対戦相手のエネルギーを利用して自分のパフォーマンスを改善する術を知るプロフェッショナルの例として紹介してきた。だが今回の「早期退職」こそ、リーダーシップの最高のレッスンなのかもしれない。スキルやエネルギーの衰えは誰にでも訪れる。それでもあと10年間CEOにとどまり、高給と役員待遇を享受し続けることは不可能ではない。だが、自分がその仕事をする最適の人間ではないならば、潔く引くべきだ。

自分の意思で恵まれた地位を退き、別の人間に活躍のチャンスを与える――そんな勇気を持つ人間は多くない。アンドリュー・ラックにはその勇気があった。私たちは彼の決断を真剣に受け止めるべきだ。

<本誌2019年9月10日号掲載>

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※9月10日号(9月3日発売)は、「プーチン2020」特集。領土問題で日本をあしらうプーチン。来年に迫った米大統領選にも「アジトプロップ」作戦を仕掛けようとしている。「プーチン永久政権」の次なる標的と世界戦略は? プーチンvs.アメリカの最前線を追う。

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2025年10月21日号(10月15日発売)は「日本人と参政党」特集。怒れる日本が生んだ参政党現象の源泉にルポで迫る。[PLUS]神谷宗弊インタビュー

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サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

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