コラム

第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC

2026年03月18日(水)14時45分
決勝でアメリカ代表に勝利しWBC初の優勝を勝ち取ったベネズエラ代表

決勝でアメリカ代表に勝利しWBC初の優勝を勝ち取ったベネズエラ代表 Sam Navarro-Imagn Images/REUTERS

<MLBを日本市場に浸透させるという当初の目的はすでに達成されている>

日本代表チームの惜敗については、やはりピッチクロック制度(投球間隔の時間制限)への習熟不足により投手陣が本来の力を出せなかったことに尽きると思います。この点に関して言えば、チーム内には、ピッチクロック導入を契機に攻撃的な投球リズムを取り戻した菊池雄星投手、投打両面から制度を知り尽くし審判との駆け引きにも優れている大谷翔平選手がいたわけです。

しかも技術や制度の問題について言語化が得意なダルビッシュ有投手も帯同していた中では、知識経験の共有ができる雰囲気があれば結果が出ていたのではと思います。その点で、もしかしたら時間だけでなく、工夫が足りなかった可能性があります。仮にそうだとすれば、やはり首脳陣に理解不足があったのだと思います。


それにしても、今回の大会はさまざまな問題を残しました。例えば、アメリカ代表が決勝進出条件を誤解して、最終戦を自滅という形で落としてしまったという事件がありました。その結果、他力本願での決勝進出となってしまいました。その決勝進出を決めた試合では、メキシコとイタリアが談合すればアメリカを排除して両チームが決勝に行けたわけです。

ですが、イタリアが終始リードする中でメキシコは敗退となりました。一見するとガチンコの試合となり、談合がなかったのは良いのですが、イタリアチームのほぼ100%アメリカ人という中では、微妙な印象を残したのも事実です。

次回大会でABSの導入は必至か

更に準決勝のアメリカ対ドミニカ戦では、ゲームセットとなったストライク判定が明らかな誤審で、非常に後味の悪い結果となりました。これによって、次回大会がもしあるのなら、ABS(ストライク/ボールの自動判定)の導入は必至という議論になっています。

決勝はアメリカ対ベネズエラとなり、結果的にベネズエラが勝ちましたが、アメリカでの中継では、政治的な問題は一切触れることがない中で、それでもファンはそのことを意識しながら見るという奇妙な結果となりました。

それはともかく、何よりも今回の大会は、大会の意義という点で大きな曲がり角に立ち至ったという印象があります。それは、このWBCという大会が、MLBにとって市場を世界へ拡大するという具体的な目的を持っていたという点に関する「曲がり角」です。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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