コラム

ブログ闇将軍となったトランプ、その不穏な影響力

2021年05月12日(水)14時30分

最近トランプの名前を聞く機会は非常に少なくなっていたが Joe Skipper-REUTERS

<バイデン政権が政策で挫折すれば、トランプが一気に攻勢を強めてくる可能性はある>

バイデン政権が発足して「最初の100日」が経過するする中、「ドナルド・トランプ」という名前を聞く機会は、非常に少なくなりました。トランプの存在感低下には理由があります。地上波テレビ、主要新聞などが取り上げなくなっただけでなく、SNSの発信を「禁止」されているからです。

トランプは、SNSとりわけツイッターを駆使する政治家として著名です。ところが、2021年1月6日にトランプ派が議会に乱入して暴力行為を働き、警官を殺害するという事件が発生すると、ツイッター社を含むSNS各社は、トランプを「永久追放」にしました。

トランプ側は政治的な弾圧だと怒っていますが、直接的に暴力を扇動したのは事実であり、また今後もその可能性があるということから、SNSやテックの各社は強硬な姿勢を取っています。

そんなわけで退任後は静かにしていたトランプですが、2022年の中間選挙まで1年半のタイミングとなったこの5月より、「ブログ」という形での情報発信を開始しました。これは、「ドナルドJトランプ・ドットコム」の中の「DESK」というページです。「トランプのDESK(執務机)から」と銘打って、ここに気の向くままにショートメッセージを掲載して、支持者に訴えようというのです。

下院共和党議員団を動かす

ツイッター時代と比較すると、ウェブの専門家によれば、ブログによる発信の影響力は数量的には2桁ぐらい小さい数字になっているそうです。しかし、他でもない「ドナルド・トランプ」がリアルタイムでメッセージ発信を始めたということの意味合いは大きく、早速効果が出てきました。

例えば、トランプの一言が、下院共和党の議員団を動かしつつある、そんな事例が出ています。

下院共和党議員団というのは、2022年の中間選挙において最も注目される集団と言っていいでしょう。とにかく、下院は2年ごとに全員改選ですから、最新の民意が反映します。人口で割り振られた小選挙区制は、基本的には現職が有利になっていますが、選挙戦のゆくえ次第では共和党が民主党を破って過半数を奪還する可能性もあると言われています。

そんな中で、議員団の全体としてはある悩みを抱えています。それは、2022年の時点でトランプはどの程度の影響力を持っているのか、という悩みです。もしも影響力を保持しているのなら、トランプ派を敵に回しては選挙には勝てません。一方で、無党派層には1月6日の暴力事件への批判があり、仮に無党派層を敵に回すと選挙戦は不利になります。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、米指標やFRB高官発言受け

ビジネス

ネットフリックス、第1四半期加入者が大幅増 売上高

ビジネス

米国株式市場=ほぼ横ばい、経済指標と企業決算に注目

ビジネス

USスチール買収計画の審査、通常通り実施へ=米NE
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 9

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story