コラム

2020年、自由と民主主義は敗北したのか?

2020年12月24日(木)15時30分

環境車もそうです。仮に軽量化したEVを粗製濫造しても、今度は安全面で問題が出ます。またAVに関しても、歩行者を排除し、域内の交通システムに参加するすべての存在にGPSと5Gのコミュニケーションを義務付けるようなネットワーク型のAVに突き進めば、統制社会以外における汎用性は限られます。自動車ビジネスは、社会システムと密接であり、ここでも透明性や世論の理解が求められ、統制だけで押し切れるものではありません。

原発の場合はもっと深刻です。万が一の事故に備えた情報公開態勢に対して世論から信頼を獲得することが大前提です。そこを楽観論や統制で押し切って「ゼロ神話」を作ってしまうと、問題が起きた時に動けなくなるという日本の教訓は中国にも当てはまると思います。

中国という巨大社会が、複数政党制や公選制に移行するのには時間が必要、ということは理解できます。拙速に進めれば、それこそ極端なナショナリズムや軍国主義を暴走させる危険が否定できません。ですが、情報公開や言論の自由という点については、民主社会に大きなメリットがあるのは事実です。また、同じ政策を実行するにあたって民意のオーソライズがあるのと、ないのとでは最終的には実行への抵抗が大きく異なります。

問題は、民意が誤った選択をすることや、選択肢が不足している場合であり、この点において確かに民主主義は危機を抱えているのは事実です。米国の政権交代を機に、この問題が良い方向へ向かうことを望みつつ、新しい年を迎えたいと思います。

ニューズウィーク日本版 習近平独裁の未来
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年2月17号(2月10日発売)は「習近平独裁の未来」特集。軍ナンバー2の粛清劇は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」強化の始まりか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米の貿易改革要求に賛同、「シグナル受け止める」=W

ビジネス

英企業、正社員の採用削減を計画 労働法改革でコスト

ワールド

ベネズエラ、政治犯17人を釈放

ビジネス

AI「グロック」、米市場でシェア拡大 性的画像巡る
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 2
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活動する動画に世界中のネット民から賞賛の声
  • 3
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワートレーニング」が失速する理由
  • 4
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 7
    それで街を歩いて大丈夫? 米モデル、「目のやり場に…
  • 8
    世界市場3.8兆円、日本アニメは転換点へ――成長を支え…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    フロリダのディズニーを敬遠する動きが拡大、なぜ? …
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 10
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story