コラム

日本の若者にとって気候変動よりも「セクシー」な問題とは

2019年09月24日(火)17時20分

確かに、今回の気候変動サミットでは、欧米を中心とした若者の動きが目立っています。サミットのキーノートとなるメッセージを発信しているのは、16歳のスゥエーデンの高校生グレタ・トゥーンベリさんですし、アメリカ政界における環境問題では、29歳のAOCが先頭を走っていると言っても過言ではありません。その一方で、日本では若者の動きがあまり見られないのは事実です。

では、日本の若者は「気候変動問題に取り組むのが楽しくない」から環境問題に無関心なのかというと、違うと思います。また、若者が保守化しているからという説明も誤りだと思います。18歳未満の選挙運動が犯罪だという制度や、ブラック校則のある中ではグレタさんのように「温暖化への抗議スト」などできないという制度の遅れの問題もありますが、それも主要な原因ではありません。

日本の若者にとって温暖化の問題が今ひとつ切実ではないのは、温暖化によって自分たちの未来が奪われる速度よりも、日本の経済衰退によって自分たちが不幸になるスピードの方が速い、そのような危機意識の中で自分を守るのに精一杯だからです。

小泉進次郎という政治家は、少なくともそうした「衰退を直視」しつつ「衰退を跳ね返すための改革が必要」という危機意識をメッセージとして訴えてきた政治家として、自民党内でも異色の存在であったはずです。それなのに、今回の「若者を勇気付けるにはセクシーでなくては」という発言が出たことが、非常に残念でなりません。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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