コラム

3年目に向けて依然として先が見えないトランプ政権

2018年12月11日(火)16時30分

このところトランプとケリー首席補佐官の不和が報じられていたが Jonathan Ernst-REUTERS

<年内のケリー首席補佐官の退任、ロシア疑惑の捜査の進展、さらにカジノ事業をめぐる不正なカネの疑惑までが浮上し、任期3年目を前にトランプ周辺はまったく落ち着かない>

就任からほぼ2年、この間のトランプ政権は政権内部でのゴタゴタが絶えませんでした。2018年11月にはその信任投票と言うべき中間選挙があり、政権与党の共和党としては下院の過半数は失ったものの、上院では勝利しています。ですが、その直後にはセッションズ司法長官が更迭されるなど、政権3年目へ向けて依然として体制は不安定です。

そんな中で、今回はジョン・ケリー首席補佐官の退任が発表されました。ここ数週間、大統領とは「会話のできる関係ではなくなった」など不和が取り沙汰されていましたが、それが現実になったのです。ケリー補佐官は、2017年7月に前任のプリーバス補佐官の辞任を受けて就任。当時は「ホワイトハウスからの情報漏れ」が大きな問題になっていたのを、内部の引き締めに成功したとされています。

そんなことから、トランプ大統領の側近中の側近と言われていましたが、遂にそのケリー氏もホワイトハウスを去ることになりました。同氏が年末で退任することがハッキリした現在、後任人事をめぐって様々な動きや憶測が流れています。

後任の首席補佐官候補として筆頭に挙げられていたのは、ペンス副大統領の首席補佐官であるニック・エアーズ氏でした。エアーズ氏は、2016年の大統領選以来、ペンス副大統領の腹心を務めていた人物で、トランプ大統領は「ケリー補佐官の後任に是非」と望んだようですが、断られてしまいました。

理由としては故郷のジョージアに戻って家族との時間を大事にしたいということで、要するにこのタイミングで大統領に仕えるのは「回避」した形です。

エアーズ氏が「回避」したのには、元々がラインス・プリーバス元大統領首席補佐官の共和党全国委員長時代の部下であったことから、共和党の主流派に近い人物であり、トランプ大統領の極端な政治には賛同していなかったという説があります。また、政権が激しく動揺している中では「火中の栗を拾う」リスクは取らなかったという解説もあります。

そのぐらい、現在の政権の周囲は騒がしくなってきています。というのは、人事問題に加えて、ここへ来て、ロシア疑惑を中心に政権の周囲の捜査を行っていたムラー特別検察官の動きが活発になっているからです。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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