コラム

3年目に向けて依然として先が見えないトランプ政権

2018年12月11日(火)16時30分

まず、ロシア疑惑に関しては、ロシアからカネを受け取っていたとして逮捕された、ポール・マナフォート元トランプ選対委員長は、一旦は「有罪を認めて司法取引に応じた」ということになっていたのですが、「取引に違反して嘘の証言をしていた」として告発されています。

一説によれば、これは「トランプにマナフォートへの恩赦をさせる」という「罠」だという指摘があります。仮に恩赦をすれば「大統領による司法妨害になる」からです。

さらに、トランプの個人弁護士であったマイケル・コーエンも、同様に「有罪を認めての司法取引」に応じていますが、このコーエンのルートからは、女性問題を隠蔽しようと、トランプ大統領本人が不正なカネを使って工作を指示したという証言が出ているようです。

これに関しては、民主党の「次期下院情報委員長」に就任すると言われているアダム・シフ議員が「トランプ大統領は、弾劾されるだけではなく、収監される可能性もある」と発言して、激しく批判をしています。

一方で、ムラー特別検察官の捜査における「本丸」は、選挙におけるロシアと癒着したハッキング活動でもなければ、女性たちへの不正な口止め工作でもなく、第三の疑惑だという説もあります。

それは、トランプの家業であるリゾート・カジノ事業における、不正な外国との関係という問題です。例えばモスクワに「トランプタワー」を建設するという構想に絡んだロシアからトランプへの不正なカネの流れがあるという説で、そこにドイツ銀行が絡んでおり、ロシアとトランプ・オーガニゼーションを含めた「租税回避とマネーロンダリング」の全体像が明らかになると、政権が吹っ飛ぶともいう見方もあるのです。

この問題についても、鍵を握るとされるコーエン元顧問弁護士が証言を開始しており、今後の証言に注目が集まっています。

現在のアメリカは年末へ向けて、徐々にビジネスも政治もスローダウンしてきていますが、政権の周囲は非常に騒がしくなっています。新しい年へ向けて、トランプ政権の行方は、不透明な状況となっています。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:値上げ続きの高級ブランド、トランプ関税で

ワールド

訂正:トランプ氏、「適切な海域」に原潜2隻配備を命

ビジネス

トランプ氏、雇用統計「不正操作」と主張 労働省統計

ビジネス

労働市場巡る懸念が利下げ支持の理由、FRB高官2人
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    オーランド・ブルームの「血液浄化」報告が物議...マイクロプラスチックを血中から取り除くことは可能なのか?
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 5
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 6
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 9
    ハムストリングスは「体重」を求めていた...神が「脚…
  • 10
    これはセクハラか、メンタルヘルス問題か?...米ヒー…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 4
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 5
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 6
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 7
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 8
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 9
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 10
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story