コラム

アラバマ補選で民主党が勝利、そのインパクトは?

2017年12月14日(木)11時30分

共和党候補のスキャンダルが注目され、僅差で民主党のジョーンズ候補が勝利したが Marvin Gentry-REUTERS

<共和党候補の過去の性スキャンダルが発覚していたアラバマ上院補選では、民主党候補が勝利。しかしこれで民主党が勢いを取り戻したと見るのは過大評価>

全米が注目していた、アラバマ州選出の上院議員補欠選挙が12月12日に実施されました。多くの未成年女性への性的行為という疑惑が報じられていた共和党のロイ・ムーア候補は、スキャンダルを全面否定するとともに、スキャンダル発覚後もトランプ大統領の支持を取り付けて「善戦」していると伝えられていました。ですが、結果としては民主党のダグ・ジョーンズ候補が僅差で勝利しています。

これで、盤石の保守州であるアラバマで上院議員の議席の1つが民主党に行くという「番狂わせ」が現実のものになりました。これを受けて、上院の勢力は「共和党51対民主党49(民主党には無所属の2人を含む)」という際どい状況になっています。

ムーア候補は、正式な敗北宣言は出しておらず、直後の時点では「再計算」を要求しています。ですが、アラバマ州法では再計算の申し立てができるのは、票差が0.5%以内の場合に限られている中で、今回は1.7%の差が付いているので、結果は動かないでしょう。

選挙結果を受けて、民主党陣営は「これで2018年の中間選挙での上院過半数奪還が視野に入ってきた」とか「トランプ政治への不信任であり、同時に性的疑惑を抱えたトランプ本人への不信任でもある」という受け止めをしており、勢い付いているのは事実です。

では、これの選挙を契機としてトランプ政権は窮地に陥っていくとか、民主党に勢いが出て、政局の方向性が大きく変化するのかというと、必ずしもそうではないという見方もあります。

まずトランプ大統領に関してですが、今回の敗北が100%大統領への不信任であるとか、政権にとっての「痛手」では「ない」という見方も出ています。まず、大統領自身は、「予備選の当初は別の候補を応援しており、最初からムーア候補では勝てると思っていなかった」とか「共和党が勝つには、勝てる候補を立てるしかない」などと、落選したムーア候補に責任転嫁をしています。

もっとも、大統領としてはスキャンダルの逆風が吹く中でも、完全にムーア支持に回っていたわけです。特に大きな集会を隣のフロリダで開いてムーアの応援をした時には、ムーア陣営は勢い付いたし、世論調査も一旦優勢になっていたのは事実です。ですから、「オレはやることはやった」というわけです。

一方で、実は共和党の保守本流には「ホッとしている」という感じも見受けられます。まず、上院共和党のボスであるミッチ・マコネル院内総務はムーア不支持でしたし、アラバマのもう1つの上院議席を守っている保守系ベテランのシェルビー議員などは「自分はムーアには投票しない」などと言っていたのです。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:イラン戦争でインフレ再燃、トランプ政権に

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、中東停戦維持期待で安全資産

ワールド

イラン交渉団がパキスタン到着、レバノン停戦要求 米

ビジネス

米国株式市場=まちまち、中東交渉控え様子見 ハイテ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 4
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 5
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 6
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 7
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 8
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 9
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 10
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 7
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 8
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 9
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 10
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story