コラム

サンフランシスコ「従軍慰安婦像」への大阪市対応は慎重に

2017年11月16日(木)17時00分

その教訓をふまえて第二次安倍政権は、例えば国連の「戦時の女性の人権擁護活動」について総理自身が国連本部で見事なスピーチを行うなど、誤解の解消に努めてきたわけです。菅官房長官も「現代における人身取引の防止」という難しいテーマに取り組んできています。そうした姿勢の集大成が日韓合意であり、その後の韓国側の迷走は別として、この問題における第二次安倍政権の姿勢は一貫して国際社会から評価されて来ました。

その信用が「シンゾー=バラク」の個人的な日米首脳の信頼関係として結実し、現在の「シンゾー=ドナルド」の関係にもなっています。大阪市の行動が大きく報道されるようになって、仮に大阪が強硬姿勢に出た場合に、それが全国的なものだとされてしまい、現在の良好な日米関係全体に影響が出るようになっては大変です。そうなれば、現在形での「日米離反」工作に引っかかってしまうことになり、安全保障上の支障が生じます。

3番目として、経済活動への影響です。サンフランシスコは昔のような貿易港ではありません。シリコンバレーの西北の拠点として、最先端の経済活動を牽引する大都市圏です。大阪が関係を悪化させた場合に、ビジネス上のパートナーシップに影響が出るようでは困ります。

さらに、大阪ローカルの問題としては2025年の万博招致の問題があります。ここで大阪という都市が国際社会に悪印象を与えてしまうと、招致が難しくなるだけでなく、仮に25年に開催されたとしても、参加企業数など大会の運営に大きな影響が出る可能性があります。

この問題については「強制連行」の有無や、韓国で「慰安婦と挺身隊が混同」されている問題など、事実の訂正が必要な点が多々あります。これは、歴史研究の専門家が粛々と行えば良いことです。今回のサンフランシスコの碑文にも「何十万人」という数の誇張や「多くは拘束されたまま死亡」といった事実関係の問題がありますが、その訂正も「政治化する」ことを避けて静かに行うべきです。

少なくとも「姉妹都市関係の解消」というような荒っぽい方法は、逆効果の危険性が大き過ぎると考えられます。仮にサンフランシスコの市長が「拒否権行使ができない」状況に立ち至ったとしても、大阪市としてはくれぐれも慎重に対処することを願います。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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