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ボブ・ディラン受賞の驚きと、村上春樹の機が熟した2つの理由
日本のある時代においては「就活」の中で、「村上春樹のファン」を自称する学生は「評価しない」という会社があったそうですが、その良し悪しは別として、経済成長へのコミットという生き方とは、村上文学の持つ「デタッチメント」というのは、相性は悪かったわけです。村上文学の本質がそうかという点は別として、そのような読まれ方がされた時代だったのでした。
ですが、現代は違います。日米欧をはじめとした先進国では、その経済は新しい段階、すなわち知的な創造力が求められる時代になってきています。企業共同体などの集団に「コミット」するような前世紀的な思想ではなく、一人ひとりが世界の現状と変化に距離を置きつつ冷静な見通しを持っていく、そのような生き方が実現されなくては、全体の成長も不可能という時代に突入しているのです。部分的には中国の社会もその段階に入りつつあります。
それは村上文学が保守本流になり、時代に追いつかれたということではありません。村上文学は、さらにその先へと走り続けています。ですが、村上文学の持っている「デタッチメント」すなわち、この世界に距離を置くことから生まれる、個人の自立した姿、無自覚な依存を拒否する生き方というのが、現代はますます重要な考え方になっている、そのことは間違いないと思うのです。
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第2の理由は、紛争とその解決という問題です。2009年にイスラエルで行われたエルサレム賞の受賞式で、村上春樹氏は「卵と壁」というスピーチを行いました。また、2011年の福島第一原発事故以降は、村上氏は原子力の平和利用への反対という立場を明確にしています。
この2つの動きについて言えば、あらゆる対象に「デタッチメント」を貫いてきた村上氏が、パレスチナや反原発運動に連帯するという、単純な「コミットメント」の立場に移動した、つまり妥協や屈服をしたのだという感想を喚起したのかもしれません。
ですが、私は違うと思います。まず、イスラエルの「壁」ですが、これは万里の長城や、ベルリンの壁、あるいはトランプの夢想する「メキシコ国境の壁」とは根本的に違います。二つのエリアを一本の線で分ける壁ではないのです。元来はパレスチナ国家の領土である西岸地区に、イスラエルはロシアなどで迫害されてきた新移民を入植させたのですが、その入植地はアラブ人の居住区の中に点々と入り組んだ形で混ざりあっているのです。
その「壁」というのは、複雑な「入れ子構造となっている」その入植地をテロから守ると称して作られた複雑な壁であり、その撤去を行うには西岸地区における両民族の共存を可能にする厳格な法体系と、共生のルールがなくては成立しません。
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