コラム

トランプ勝利会見に寄り添うクリスティー知事の深謀とは

2016年03月03日(木)20時00分

トランプの勝利会見に寄り添ったクリスティー知事(写真左)の表情は終始、硬かった Scott Audette-REUTERS

 全米11州の予備選・党員集会が集中した「スーパーチューズデー」の結果は、7州を制した共和党ドナルド・トランプ候補の「大勝利」と言って良いでしょう。トランプは、これまでの予備選のように大人数の支持者を集めて行う「勝利集会」ではなく、「記者会見」を開きました。

 場所は、フロリダ州パームビーチにある高級会員制リゾート「マール・ア・ラーゴ」で、1985年以来トランプ一族が所有している豪華な建物です。

 会見場には、クラシックな内装に豪華なシャンデリアが目立つ金ピカの部屋が使われ、正面には演壇がセットされ、背後には星条旗がズラリと並べられていました。そこにトランプの「番記者」など報道関係者100人程度と、各局の中継カメラが招かれているという趣向です。

 ご本人は、静かな環境で大統領のような「風格」を見せたかったのでしょう。ですが、決して趣味が良いとは言えない部屋の時代がかった雰囲気からして、大統領風の記者会見と洒落込んだところで、19世紀の「裏取引と裏切り」にまみれた時代を彷彿とさせる――そんな印象は否定できませんでした。

【参考記事】トランプ勝利で深まる、共和党「崩壊の危機」

 この「勝利会見」の冒頭に登場したのが、ニュージャージー州のクリス・クリスティー知事です。「それでは『次期合衆国大統領』のドナルド・トランプ氏です」と紹介役を務めた後は、会見中のトランプの背後にずっと寄り添っていました。その顔は全国中継のテレビにずっと映り続けていたのですが、終始「緊張した硬い表情」をしていたのが印象的でした。

 クリスティー知事は、スーパーチューズデー直前の先月26日になって突然「トランプ支持」を打ち出しています。そのすぐ前までは、自分も大統領候補レースに参戦していました。ですが、ルビオ候補に対して「同じことを4回も言うロボット」という「いじめトーク」を仕掛けて足を引っ張るのに成功したついでに、自分のイメージも「いじめキャラ」というレッテルを貼られてニューハンプシャー州の予備選で沈没したばかりです。その変わり身の早さがヒンシュクを買っています。

 あげくにトランプの「勝利会見」にずっと寄り添ったことで、クリスティー知事は全国的な「悪役」にされています。特に地元ニュージャージー州周辺では、有力な地方紙6紙が一斉に知事に対して「辞任要求」を突き付ける事態になっています。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエル、レバノンにヒズボラ武装解除要請 失敗な

ワールド

AIを国際公共財に、習氏が国際機関構想アピール A

ワールド

トランプ氏、エヌビディアの最先端半導体「中国など他

ビジネス

サハリン2のLNG調達は代替可能、JERAなどの幹
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 10
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story