コラム

「維新の会」分裂は政界再編に繋がるのか

2015年09月03日(木)16時20分

 もう1つの路線、それこそ柿沢幹事長などのグループは「民主党を含む野党再編」を考えているわけです。こちらは、「安保法制」に関するデモの盛り上がりや、五輪に関する安倍政権の「もたつき」を好機ととらえて、現政権批判を重ねていくことで政権交代を目指そうという意識を持っていると思います。

 こちらの方も、民主党が統治能力に関する不信任を有権者から食らったことへの反省が足りないという問題と、では「どうしたら政権の受け皿としての統治能力を信じてもらえるか?」という点で確固たる答えを持っていない、これもまた深刻な問題です。

 では、消去法で安倍内閣がこのまま9月以降も力を維持できるのかというと、こちらも世界経済が不安定な中、「アベノミクス」の株高効果に揺らぎが出ていること、にも関わらず産業構造の転換など「次の段階の経済」への手が打てていない中で、徐々にデフレのトレンドが「はがれたメッキの下」から顔をのぞかせつつあるわけで、決して政権の基盤は強くはありません。総裁選に関してはそうした点から党内活性化ができるかがポイントとなると思います。

 要するにすべてにわたって政策論議が圧倒的に足りないのです。安倍政権、総裁選の対抗勢力、大阪維新、民主との連携を志向する勢力、この4つが9月の政局の「役者」であるとしたら、最低限でも次の3点に関して「政策の方向性と遂行能力チェック」が必要ではないでしょうか?

(1)統治能力の証として、2020年東京五輪を「定められた予算シーリング」の中で、酷暑の季節に安全に実施することができるという信頼を国内外から得られるのか?

(2)中国に対して強硬に過ぎて軍拡の口実を与えることのないように、また寛容に過ぎて領土領海の野心を許容していると誤解をされないような「狭いゾーン」からブレない外交、これを前提としての日中、日米、日韓の安定した外交を構築することができるのか?

(3)17年4月の消費税率アップを成功させ、それが社会保障との一体改革と連動して国民の将来不安を緩和させ、最終的にデフレ心理から脱却を図るという国策をブレずに追求できるか?

 こう並べてみると、どれも難しいテーマのように見えます。ですが、いずれも避けて通れない課題です。そうした問題の重さに立ち向かうことなく、集合離散を繰り返しても、支持は得られないと思います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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