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「日本酒」は国内産に限るという規制は果たして可能か?
それでは、「ジャパニーズ・サケ」はダメとする代わりに、例えばアメリカでは「アメリカン・サケ」としたらどうかというと、これも問題があります。というのは、"sake" という言葉は、最近では「サケ(実際の音はサキに近い)」という発音で日本酒という意味が普及していますが、別に「セイク」つまり「〜のため」という意味の単語があるからです。ですから、消費者に混乱を生じないためにも海外産の場合でも「ジャパニーズ・サケ」という表示は必要と思います。
どうしてこういうことが起きるのでしょう?
それは、「日本酒」というのは、世界の酒の区分の中で「ボルドー」とか「スコッチ」と同じ階層のカテゴリではなく、その上位の「ウィスキー」とか「ワイン」の階層に属するカテゴリだからです。ですから、日本酒を「日本製だけ」にしよう、「日本酒」や「ジャパニーズ・サケ」を「地理的表示制度」を使った「ブランドにしよう」というのは、そもそも無理な話です。
例えば、「日本酒」とか「ジャパニーズ・サケ」という表現を日本製に限るというのは、例えば「ウィスキー」を名乗れるのは英語圏だけというような規制に等しいのです。そうなったら、例えばサントリーやニッカは「ウィスキー」に代わって「赤麦焼酎」とか「麦汁リカー」といった「言い換えを強いられる」ことになるので非現実的です。
スコットランドで修行して日本産ウィスキーを開発した「マッサン」の物語が人気を博したことを考えると、日本で修行して今後は海外で「うまい日本酒」を作ろうとしている人々に対して「日本酒やサケを名乗るのは許さない」というのは、あまりに狭量ではないでしょうか。
このような規制は、「日本酒」あるいは「ジャパニーズ・サケ」が、世界に通用する普遍性のある「飲料のカテゴリ」として認知され、今後も認知が進む可能性を阻害するだけです。シャンパーニュ地方はともかく、大国ニッポンのやることではありません。
もう1つ問題があります。国産であっても「本醸造酒」には、輸入原料を使った醸造アルコールが使われているという事実です。これを機会に「日本酒は純米酒だけ」にすればいいのかもしれませんが、実は「醸造アルコールを添加した本醸造酒」というのは品質安定効果もあり、国税庁の資料によればこちらのほうが「純米酒」よりも生産量は多いし、ファンもいるのですから混乱は必至です。
やはり「日本酒は国内産に限る」という発想には無理があるようです。2006年に断念に追い込まれた「寿司ポリス騒動(「海外日本食レストラン認証」制度案)」と同様に、引き際が肝心だと思います。
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