ウォーシュ氏のFRB資産圧縮論、利下げ志向と両立せず 市場混乱も
米ワシントンのFRB本部R、2025年9月撮影 EUTERS/Ken Cedeno//File Photo
Michael S. Derby
[2日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)の次期議長に指名されたケビン・ウォーシュ氏は、数兆ドル規模に膨らんだFRBのバランスシートを大幅に圧縮したいと考えているとみられるが、金融の実情を考えると簡単ではなく、できたとしても時間を要するというのが専門家の見立てだ。
なぜか。市場の安定を維持し、金融政策目標を達成しつつ、FRBの保有資産と金利管理体制を巻き戻すことは容易ではないからだ。利下げを考えているなら、なおさらだ。中央銀行の保有資産を大幅に減らすことは、金融環境の引き締めになってしまう。
2006年から11年までFRB理事を務めたウォーシュ氏は、FRBの巨額の資産保有は金融システムを歪めているとして、削減すべきだと主張してきた。昨年11月の米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)への寄稿でも「過去の危機の時代に大企業を支援するために設計されたFRBの肥大化したバランスシートは大幅に縮小できる」と主張し、その資金は「低金利という形で家計や中小企業を支援する」ことに再配分されると説いた。
コロナ禍の危機対応としての国債等の買い入れで、FRBの資産は22年夏に9兆ドルに達した。その後、量的引き締め(QT)と呼ばれる縮小プロセスにより25年後半には6兆6000億ドルにまで減少した。ただ昨年12月、金融システムの流動性を確保し、金利を目標レンジに収める目的で短期国債購入を決定し、保有残高を再び増やし始めた。
危機時には短期金利がゼロ%まで下げられる可能性が高いことを考えると、バランスシートの活用は極めて重要な政策手段で、金融政策の標準的な手段となってしまっている。その過程でFRBの金利管理ツール体系が構築されたため、市場の混乱を招くことなく保有資産を意味のある形で削減することは非常に困難なのだ。
SMBCキャピタル・マーケッツの米金利ストラテジスト、ジョー・アベイト氏は「ウォーシュ氏はバランスシートの縮小と金融市場におけるFRBの影響力縮小を望んでいるのかもしれない」とした上で、「バランスシートの規模を実際に縮小するのは無理だ。銀行はそのレベルの準備金を望んでいる」と述べた。
銀行システムの準備金が3兆ドル程度まで減少すると、短期金融市場金利に顕著な変動が見られ始め、FRBの金利目標管理能力が脅かされる。それがFRBの保有資産削減を制限すると同氏はいう。
市場の反応以外にも制約要因はある。FRB内でバランスシートを政策ツールとして活用する方針におおむね賛同している政策担当者が、再設計の取り組みに反対する可能性だ。
<保有資産縮小は長い道のり>
では、市場が何を許容するかという現実問題を踏まえた上で、ウォーシュ氏はどうしたらFRBの保有資産を圧縮できるのだろうか。アナリストらは、銀行の流動性管理に関する規制上の負担の一部緩和、ディスカウント・ウィンドウや現在実施中のスタンディング・レポ・オペレーションといった流動性供給制度の魅力を高めることで、準備金保有意欲が減り、FRBの影響力が徐々に縮小していく可能性があると指摘している。
ジョージ・メイソン大学マーケタス・センターのシニア・リサーチ・フェロー、デビッド・ベックワース氏は、これらの措置に加えて、ウォーシュ氏がFRBの既存の定期的な枠組み見直しの一環として、バランスシート活用方法の見直しを盛り込む可能性があると述べた。
大きな変化は起こらないかもしれないが、FRBがツールキットを微調整することで、大量の流動性を保有する必要性を減らす方法はいくつかある。
「FRBはゆっくりと方向転換する船のようなもので、それはおそらく良いことだ。金融システムに大きな混乱を招きたくないからだ」とベックワース氏は語った。
エバーコアISIのアナリストも、ウォーシュ氏がバランスシートに関して何らかの動きに出るとしても、アグレッシブさがはらむリスクを認識し、穏当なものになるとみている。
「彼は多くの人の予想よりも現実的だろう。FRBのバランスシート政策に急激な変更を加えず、FRBと財務省が緊密な協力の枠組みを提供する合意を約束するだろう」と述べた。「市場はこれをベセント財務長官にQT計画に対する事実上の拒否権を与えるものと解釈し、ウォーシュ氏もそれに満足するだろう」と指摘した。
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