コラム

景気後退でも与党が圧勝する日本の構造問題

2014年12月18日(木)13時10分

 一方で、大都市の中間層は違います。景気動向が自身の生活に直接響くのは、ボーナスや昇給ぐらいであって、ハッキリ言えば「短期的な景気動向よりも、自分の組織内でのポジションの上下動」の方が切実な問題なのです。

 それは悪いことではありません。むしろ恵まれているわけで、大きな組織に属していることで景気が自分の生活に影響するのを、所属する組織がバッファーになって衝撃を吸収してくれるのです。

 鳩山政権の民主党にいたる「都市型の政党」が「供給側より消費者の利害」であるとか「行政サービスの受益者の観点」から「マニフェスト」を訴えたのは、こうした大都市の中間層票の持つ特徴にターゲットを絞っていたからです。

 これに加えて、大都市にある大企業の多くは「生産拠点と市場を国外に出している」という問題があります。つまり、工場も販売先も国外、国内にあるのは本社などの事務機能と、研究開発などという構造です。こうした場合は、企業の経済活動はGDPの枠外になる一方で、海外で稼いだカネは円安で「水増しされた」形で本社に連結されてきます。

 こうした多国籍企業の場合は、円安は大きなメリットとなる一方で、国内のGDPが低迷しようが、あるいは国内の購買力が細くなろうが、まったく痛くもかゆくもないことになります。つまり国内の不況やデフレ経済とは、違う世界で勝負して、稼いだカネだけを持ち込んできているのです。

 では、こうした経済の構造は「仕方がない」し、このように「現実主義の保守政権」が切羽詰まった中小企業や、多国籍化した大企業に支えられていくというのは「この道しかない」唯一の選択なのでしょうか?

 私は違うと思います。脆弱な中小企業に引きずられて短期的な利害だけで判断を続けていては、日本経済そして国家財政には弊害が大きいと思います。また、いつまでも都市の中間層が「とりあえず消費者、サービス受益者」として政策を判断するような「余裕のある立場」であり続けるとも思えません。

 さらに言えば、いくら個々の企業としては合理的な判断であるとしても、製造拠点も市場もどんどん外に出し続けて行けば、国内の空洞化は進行するばかりです。その意味で、今回の選挙で「不況なのに現政権が大勝した」という構図の中には、日本の経済社会の様々な問題が横たわっているように思います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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