コラム

コネティカット乱射事件から一周年、進まない銃規制

2013年12月17日(火)11時11分

 2012年の12月14日にコネティカット州のイーストタウンにあるサンディーフック小学校で発生した乱射事件から、一周年を迎えました。事件の直後には、大きく盛り上がった銃規制議論ですが、結局のところ進展はなく、全国レベルではこの事件は既に風化が始まっています。一周年という節目を迎えたにもかかわらず、メディアの扱いは本当に静かでした。

 更に今回の「一周年」の前日、12月13日の金曜日には新たな銃撃事件が発生してしまったのです。舞台はコロラド州で、1999年に乱射事件のあったコロンバイン高校から車でほんの10分という場所、そして今回も高校が舞台となりました。報道によれば、狙撃犯はある教員との間に確執があったというのですが、基本的には自殺を前提とした破壊行動を計画しており、銃の他に火炎瓶などを校内に持ち込んでいたようです。

 このコロラドの事件では狙撃犯は自殺して、死者はそれだけだったのですが、巻き添えを食った女子生徒が意識不明の重傷を負っています。この重傷者の存在が報道には重くのしかかった感があります。「現在進行形のこの重傷者の扱いよりも、コネティカットの一周年を大きく扱うのは不自然」だが、「この重傷者のことばかり扱うのも不自然」という感覚の中で「銃規制議論」の報道はどこかへ行ってしまったのです。

 またコネティカットの事件で犠牲になった児童の遺族たちの間でも、熱心な銃規制派と銃保持派の間に分裂が見られる中で、首都ワシントンDCへの銃規制を求める請願活動も下火になっています。では、事件の起きたイーストタウンでは何をやっているのかというと、それは地道な活動です。

 例えば、犠牲者の遺族や地元の人々や、事件のあったサンディーフック小学校の卒業生などの関係者による「全世界から寄せられた手紙の保管運動」というのがあります。事件の後に、世界中から多くの手紙やメールが寄せられたそうで、その多くは遺族や関係者への「お見舞い」だったそうです。こうした手紙やメールを手分けして丹念に読んで整理してゆく、そのプロセスが「心の癒し」になるのだというのです。

 事件について「銃規制議論」という文脈で一旦は多くの関心が喚起されたのですが、その議論が下火になる一方で、事件の傷は放置されたままだというのです。その傷を癒すということを、コツコツとやっていこうというのです。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、プーチン氏のイラン支援を示唆 ドローン

ビジネス

米ミシガン大消費者信頼感、3月速報値55.5に悪化

ワールド

キューバ、米と協議開始 石油封鎖の影響深刻化

ワールド

トランプ氏、イランのウラン押収の可能性に言及=報道
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切りは常軌を逸している」その怒りの理由
  • 2
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 3
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド太平洋防衛
  • 4
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 5
    「イラン送りにすべき...」トランプ孫娘、警護隊引き…
  • 6
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 7
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革…
  • 8
    北極海で見つかった「400年近く生きる生物」がSNSで…
  • 9
    謎すぎる...戦争嫌いのMAGAがなぜイラン攻撃を支持す…
  • 10
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 7
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 8
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story