コラム

芸人的にもアリエナイ、トランプ・ジョークの末路

2016年10月26日(水)16時00分

Rick Wilking-REUTERS

<最後の候補者討論会でも暴言を吐き続けたトランプ。あり得ない「トランプ・ジョーク」の中でも、特にパックンが憤りを禁じ得なかったワースト3をセレクション!>

 怒った!がっかりした!呆れた......。

 トランプ大統領候補の発言に対してこんなリアクションをすることは珍しくはないが、この間のヒラリー・クリントンとの三回目のテレビ討論会とその翌日――あの2日間は、何度も憤りマックスに至る瞬間が特に多かった。

 選びづらかったが、とりあえずその中からのトップ3を紹介しよう。

第三位:「いやな女」

 三回目の大統領討論会でヒラリーを指して言った言葉。日本でも問題発言として紹介されているが、おそらく皆さんが理解しているよりもひどい言い方だ。原型はSuch a nasty woman。Nastyは口に入れても呑み込めないほどまずい食べ物などに使う文句。おぇっとするような、拒絶反応を起こすほどのえぐいものを指す。生放送中の大統領候討論会だからということではなく、普段から人に対して、特に女性に対して使ってはいけないような表現だ。いやな男だね。

<参考記事>【対談(前編):冷泉彰彦×渡辺由佳里】トランプ現象を煽ったメディアの罪とアメリカの未来

第二位:「この場で誓います。選挙の結果をちゃんと受け止めます...。僕が勝てばね」


 これは討論会の翌日のイベントでの発言。冗談っぽいけど、前から何度もトランプは「不正がある」と発言し、選挙の結果を認めないことを示唆しているから、とてもじゃないけど笑えない。事実無根の主張で、民主主義の大前提である選挙の信頼性への疑いを煽るのは言語道断だ。トランプの側近、子供、副大統領候補などはみんな、大人らしく「結果をちゃんと認めます」と発言しているのに、負けそうになっている本人は「いやだ、いやだ」と駄々をこね続けている。ヒラリーが討論会で「彼は受賞ができなかったから、『エミー賞も不正している』と主張したこともある」と指摘した通り、トランプはすぐ言い訳をしたり、誰かのせいにする幼稚な人。「小学生以下の精神年齢だ」と見ていて思うけど、それは、幼稚園生にも失礼だね。

第一位:「ヒラリーは汚職しすぎて、ウォーターゲート特別委員会から追い出された」


 これは同じ日の夜に行われた晩餐会での「偽ジョーク」。

 アルスミス晩餐会は毎回大統領選挙前に開催され、大物政治家やセレブ、メディアなどが集まる恒例のチャリティーディナー。ここで、大統領候補がそれぞれ演説ではなくジョークを披露するのが定番。アメリカ国民は、リーダーシップやビジョンと並ぶぐらいに「ユーモアのセンス」を大統領に求めているから、候補たちもかなり力む場だ。プロのライターを雇ったりして、一生懸命、20分ぐらいのネタを作りあげるのだ。政治とお笑いが大好き(というかプロ?)である僕にとっては、4年に一度だけの超お楽しみ。

 今回も笑えるものがいっぱいあった。よく寝ていると噂されているヒラリーは冒頭で「大事な晩餐会だから、私のハードな昼寝スケジュールから休みを取ってきました」と始めた。どっか~ん!大ウケだ。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story