コラム

感嘆! 4通りに組み替えられるお絵描きロボット「mDrawBot」

2015年10月09日(金)17時10分

mDrawBotは、マーカーで絵を描くという点に特化させたことで、唯一無二のポジションを得たホビー系ロボット。

 新たに始まるこのコラム「魅惑するプロダクツ」は、筆者が、そのコンセプトやデザイン、カラクリなどの点で抗しがたい魅力を感じる製品を、隔週で採り上げて紹介するという趣向の連載である。

 それは、基本的にはユニークな発想に満ちたものだが、必ずしも最新の製品とは限らない。インターネットの時代でも、まだこの世の中には、広く知られていなかったり、忘れ去られていたプロダクトたちに出遭うことがある。そうした温故知新的なアイテムにも、ときにはフォーカスしてみたいと思う。

 さて、1回目の製品は、Makeblock社の描画ロボットキット、mDrawBotだ。クラウドファンディングサイト、Makuakeでの標準支援価格は19,889円だったが、これは電子パーツや電子工作キットを販売するスイッチサイエンスが市場調査目的の試験販売的に頒布したもので、現在は終了している。しかし、目標額の3倍以上の支援金額を集めて好評だったため、近い将来には何らかのアナウンスがありそうだ。

 Makeblock社は正式名称を深圳メイカー・ワークス・テクノロジー社といい、中国の若いエンジニアたちが立ち上げた会社で、社名の通り深圳に本社がある。Arduinoベースのオープンソース・ロボット・コンストラクション・プラットフォームの開発・販売を行っており、mDrawBotキットもそのパーツで構成されている。


 今では市場にたくさんのホビー系ロボット製品が出回っているが、mDrawBotは、マーカーで絵を描くという点に特化させたことで、唯一無二のポジションを得た。

 たとえば、それなりの大きさの壁に絵を描こうとした場合、かつては、下絵と壁の両方にグリッドを描いて線を引く際の目安にしたり、下絵をプロジェクターで投影して人間がトレースするというやり方が普通だった。しかし、何年か前に、2点から吊ったワイヤーにぶら下がり、その間を巧みに移動しながら描画するメカを見たことがあり、そのシンプルな仕掛けと、ワイヤーの長さに応じていくらでも大きな絵が描けるスケーラビリティに感嘆したことがあった。

 mDrawBotキットで作れるmSpiderというロボットは、まさにその機構を再現したもので、ホワイトボードなどを利用して、利用後に消去するような告知バナー的な用途に使うこともできる。

mSpider.jpg

2点から吊ったワイヤーにぶら下がって描画するmSpider

 それだけでも十分に魅力的だが、実際にはそこに留まらず、普通に平面に絵が描けるmScara、タマゴやピンポン球のような小さな球状のものの表面に描画可能なmEggBot、そして自走しながら軌跡としてイラストを描くmCarを含む、計4種のロボットが作れるのだ。

mScara.jpg

平面に絵が描けるmScara

mEggBot.jpg

タマゴやピンポン球のような小さな球状のものの表面に描画可能なmEggBot

mCar.jpg

自走しながら軌跡としてイラストを描くmCar


 すべてのコントロールはmDrawという専用アプリケーションから行われ、描画の元データとしては、SVG形式のベクトルイメージファイルか、BMP形式のビットマップイメージファイルを利用できる(後者は、SVG形式に変換される)。

 もちろん、mDrawBotが自分で絵を描く行為を置き換えたり、無意味なものにするわけではなく、それとは異なる体験を、特に子どもたちにもたらすことに大きな意義がある。同じ目的を達成するために、様々なアプローチがあると知ることが、とても大切と思うからだ。

プロフィール

大谷和利

テクノロジーライター、原宿AssistOnアドバイザー、NPO法人MOSA副会長。アップル、テクノロジー、デザイン、自転車などを中心に執筆活動を行い、商品開発のコンサルティングも手がける。近著に「成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか」(現代ビジネスブック)「ICTことば辞典:250の重要キーワード」(共著・三省堂)、「東京モノ作りスペース巡り」(共著・カラーズ)。監修書に「ビジュアルシフト」(宣伝会議)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

香港の大規模住宅火災、ほぼ鎮圧 依然多くの不明者

ビジネス

英財務相、増税巡る批判に反論 野党は福祉支出拡大を

ビジネス

中国の安踏体育と李寧、プーマ買収検討 合意困難か=

ビジネス

ユーロ圏10月銀行融資、企業向けは伸び横ばい 家計
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 5
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 8
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story