コラム

松本人志「性加害疑惑の真相」を11パターン想定してみる

2024年01月23日(火)20時37分

「真相」を推定することは可能

週刊文春が第一報を報じてから現在に至るまで「シロクロはっきりしていない」「どこまで事実か分からない」「密室の出来事は当事者にしか分からない」ゆえに「今は何も語るべきではない」という言説が根強い。

確かに、現段階では明確な結論を出せる段階ではない。が、報じられている内容から合理的な範囲で「真相」を推定することは可能だ。「真相」としては、以下のようなパターンが考えられる。

1 文春記事が完全な捏造で、A子さんほか証言者もすべて架空の存在。記事中の写真も全部ニセモノ。

2 A子さんら証言者は存在するが、全員が完全な作り話をして嘘をついている。

3 証言者たちは松本人志と面識はあるが、飲み会をしたことはない。話の大部分はやはり創作。

4 証言者たちは松本人志と飲み会をしたことはあるが、会場は居酒屋の個室などで、ホテルには行っていない。

5 証言者たちは松本人志とホテルの部屋で飲み会をしたが、終始円満で何もトラブルはなかった。

6 証言者たちはホテルの部屋で飲み会をし、松本人志と別室で二人きりにさせられたが、平穏に雑談をしただけだった。

7 証言者たちは松本人志と別室で二人きりにさせられたが、性的関係を持つことを両者が完全に同意したため、円満な状態だった。

8 証言者たちは松本人志と別室で二人きりにさせられた上、性的関係を要求された。同意はなかったが、利益供与(仕事の紹介、多額の金銭の支払いなど)をチラつかされたので、嫌々ながら受け入れた。

9 同じく同意はなかったが、断った際に松本人志から嫌われて不利益を受けることを憂慮し、恐怖を感じながら嫌々受け入れた。

10 松本人志から性行為を要求されて女性は拒否をしたが、力づくで強制的にわいせつ行為をさせられた。しかし、刑事告訴できるほどの明確な証拠は残っていない。

11 強制的にわいせつ行為をさせられ、刑事告訴できる明確な証拠も残っていたが、敢えてしなかった。

「密室」はトラブルが起きる

松本人志や吉本興業が当初発表した「事実無根」の文字を見た時、多くの人は「1」〜「5」あたりを想像したのではないか。だが、その後たむらけんじはラジオで「そういう飲み会があったのは事実」と語った。この時点で「事実無根」との説明は無理があることがはっきりした。

すでに指摘されているが、「6」や「7」も常識的に考えられない。初対面の男女が密室に入った瞬間、両者に恋愛感情が芽生えて性行為に至った――というのは、「特殊浴場」の室内でしか起こり得ない極めて不自然な事態だからだ。ましてや今回の場合、証言者と松本人志は親子ほども歳が離れている。

となると、「8」〜「10」あたりが真相に近いのではないかと私には思えるのだが、いかがだろうか。これらが混じり合っていることも、十分あり得る(利益供与をチラつかされ、恐怖を感じ困惑しているところを力づくで迫られた等)。

「密室のなかのことは分からない」とは言え、例えば婚外恋愛をしている男女が2人でホテルに入った時点で不倫が成立するのと同様に、記事中のような状況下で「2人で密室に入った(入るよう強要された)」ならば、その時点で何らかの性加害を受けた可能性は高いと言えるのではないか。少なくとも、いかにもトラブルが起きそうな異様な状況である。

「そもそもそんな飲み会に行くのが悪い」というお決まりの被害者叩きをする声は今だに聞こえるが、これはサッカーのPK戦でゴールを外した選手に対するヤジのようなものだ。「今のはどう見ても左だろ! キーパーの動きからして右狙いはあり得ない!」等々、結果を見てからなら何とでも言えるのである。耳を傾ける価値はない。

プロフィール

西谷 格

(にしたに・ただす)
ライター。1981年、神奈川県生まれ。早稲田大学社会科学部卒。地方紙「新潟日報」記者を経てフリーランスとして活動。2009年に上海に移住、2015年まで現地から中国の現状をレポートした。著書に『ルポ 中国「潜入バイト」日記』 (小学館新書)、『ルポ デジタルチャイナ体験記』(PHP新書)など。

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