最新記事

シリーズ日本再発見

電柱を減らせば日本の魅力はさらに増す?

2017年01月30日(月)11時37分
長嶺超輝(ライター)

 その他の地方道で、今後は無電柱化に取り組んでいくことになりますし、おのずと全国各地で「無電柱化モデル地区」ができていくはずです。

 東京都下で無電柱化に熱心なのは豊島区で、巣鴨をそのモデル地区にしようとしています。そうして、地蔵通り商店街の観光客誘致を図ろうとする狙いがあります。

――豊島区の住民も無電柱化に熱心なのでしょうか。

 住民はそうでもないと思いますよ。でも、急に住民の意識が変わる瞬間というのもありまして、たとえば埼玉の川越です。もともとは反対の住民が多かったのですが、無電柱化をきっかけに観光客が急増したので、今では自分で費用を出して電線を地中に埋める店もあるぐらいです。無電柱化によって、街の人気が向上すれば、地価も上がります。

――街が綺麗になるだけでなく、「得をする」という現実的なモチベーションを伴うならば、われわれ民間人も動きやすいです。

 京都の先斗町でも、無電柱化を進めようとしています。観光客に喜んでもらえるような、昔ながらの景観の確保が目的です。

――ご著書の中で、先斗町ではなかなか無電柱化を進められないとお書きでしたね。

 でも、やろうという方向になっています。あれだけ狭い道から電柱をなくすのですから、誰も文句は言わないですよね。すでに多くのガス管や水道管が地下で張り巡らされていて、権利関係もややこしいし、無電柱化は絶対に無理だと言われていたのですが、それでもやると。

 また、小池都知事は現在、無電柱化を進める都内の自治体に助成金を出すと表明しています。環境大臣時代には「クールビズ」でネクタイを引っこ抜いたから、今度は電柱を引っこ抜くと言っていますし(笑)。

 東京都は東京電力の大株主でもあるので、都知事ならば無電柱化を直接交渉できる余地があります。また、無電柱化の条例を作る自治体も、これからどんどんできていくでしょう。

――昨年、つくば市(茨城県)が制定していますね。

 ええ、つくば市の条例は電柱の新設禁止を定めており、それに違反し、市からの勧告にも従わない業者があれば、名前を公表することにしています。国の法律と比較しても、かなり踏み込んだ内容です。そのほか、芦屋市(兵庫県)でも条例化の検討が行われています。

 無電柱化の方法は、決してひとつではなく、多様な「メニュー」があるのです。お金をかけないやり方もあります。全国のあちこちで実験をして、妙案は真似し合えばいいのです。

◇ ◇ ◇

 日本の街から電柱が減っていけば、観光客が増えていくなどという直接的な関連性はないかもしれない。ただし、和の風景の中に「捨てられた」電柱や電線が、せっかくのフォトジェニックぶりを損なわせているのは確かだ。

【参考記事】新宿―東京は何線で? 日本の交通案内は分かりやすいですか

 訪れた観光客一人ひとりが、様々な美しさや魅力を捉えた写真や動画を、思い思いにSNSでシェアすることで、日本の多彩な魅力が世界へ広がり浸透していく。その蓄積は、長い目で見れば外国人観光客の増加と、国際的な経済基盤の強化に結びつくだろう。

japan_banner500-7.jpg

japan_banner500-6.jpg

MAGAZINE

特集:嫌韓の心理学

2019-10・15号(10/ 8発売)

日本人はいつから韓国が嫌いになったのか? 心理学とメディア分析で「嫌韓」を分析

人気ランキング

  • 1

    イランで逮捕された「ゾンビ女」の素顔

  • 2

    全米最悪93人の連続殺人犯が「驚異的」な記憶力で描いた被害者の肖像

  • 3

    保守がネット右翼と合体し、いなくなってしまった理由(古谷経衡)

  • 4

    ラグビー日本代表「多様性ジャパン」は分断と対立を…

  • 5

    写真撮影で「怪しいOKサイン」を出したテーマパーク…

  • 6

    台風19号、東日本直撃し各地で氾濫被害 千曲川は堤防…

  • 7

    台風19号、関東中心に記録的な風雨 2人死亡

  • 8

    日本が「生産性が低すぎる国」になった五輪イヤー 衰…

  • 9

    プレゼンでスティーブ・ジョブズから学ぶべきでない3…

  • 10

    台風19号接近、東海・関東地方で河川が氾濫危険水位に…

  • 1

    イランで逮捕された「ゾンビ女」の素顔

  • 2

    全米最悪93人の連続殺人犯が「驚異的」な記憶力で描いた被害者の肖像

  • 3

    なぜ韓国の若者は失業に苦しみ続けるのか

  • 4

    「OK」のサインは白人至上主義のシンボルになったの…

  • 5

    北朝鮮漁民は「100年前の船」で無謀な出漁......日本…

  • 6

    日本に巣食う「嫌韓」の正体

  • 7

    『ジョーカー』怒りを正当化する時代に怒りを描く危…

  • 8

    ツイッター動画が人生を変えた......ホームレス・シ…

  • 9

    「国に『金くれ』とか言うなよ」という話? 再開され…

  • 10

    写真撮影で「怪しいOKサイン」を出したテーマパーク…

  • 1

    韓国で長引く日本製品不買運動、韓国企業への影響が徐々に明らかに

  • 2

    写真撮影で「怪しいOKサイン」を出したテーマパークのスタッフが解雇

  • 3

    イランで逮捕された「ゾンビ女」の素顔

  • 4

    「OK」のサインは白人至上主義のシンボルになったの…

  • 5

    繁殖を止めるために遺伝子組み換えされた蚊、自然界…

  • 6

    「独島が韓国の領土であるとの証拠は何もない」韓国…

  • 7

    米韓関係の険悪化も日本のせい⁉ 文在寅がまた不安な…

  • 8

    コモドドラゴンの体内に「鎧(よろい)」があること…

  • 9

    サウジ原油施設攻撃で世界は変わる

  • 10

    ハワイで旅行者がヒトの脳に寄生する寄生虫にあいつ…

英会話特集 資産運用特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!