最新記事
シリーズ日本再発見

「なぜ外国人観光客は日本の文化を勉強しないのか」と聞かれたクールジャパン専門家は...

2023年01月13日(金)15時35分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
日本観光

写真はイメージです Satoshi-K-iStock.

<日本人の「おもてなし」はナルシシズムに陥っていると、内閣府公認クールジャパン・プロデューサーを務めるアメリカ人が指摘。観光客は勉強しに来るのではなく、休暇を過ごしに来るだけ。勘違いすべきじゃない>

日本が世界市場で生き残っていくためには、海外の人たちが持つ日本のイメージとは何かを知り、本当のインバウンド需要に寄り添っていくことが必要だ――。

ニューヨーク州生まれの国際コミュニケーション・コンサルタントで、「クールジャパンのエキスパート」であるベンジャミン・ボアズ氏はそう主張する。

だが現状は、日本人視点の「マイ・ジャパン」にこだわってしまっており、多くの日本人が誇りに思う「おもてなし」でさえもナルシシズムに陥っていると、内閣府公認クールジャパン・プロデューサーを務めるボアズ氏は言う。

ボアズ氏はこのたび、『日本はクール!?――間違いだらけの日本の魅力発信』(クロスメディア・パブリッシング)を上梓。海外視点の「ユア・ジャパン」で日本の商品・文化をPRすることの重要性を、ビジネスやコミュニケーション戦略の具体例とともに、わかりやすく解説した。

同書から、一部を抜粋して掲載する(この記事は抜粋の第2回)。

※抜粋第1回:日本の観光政策は間違いだらけ、「クールジャパン」の名称は自画自賛で逆効果だ

◇ ◇ ◇

おもてなしという名のナルシシズム

以前、着物や伝統舞踊などの専門家のグループに、クールジャパンについて講義をしたことがあります。講義の最後に、質疑応答の時間を設けました。

ある専門家が「外国人観光客が日本に来たとき、彼らはなぜ間違った態度をとるのか」と質問しました。その専門家は「外国人が日本に来るときは、日本の文化を勉強して、日本にいる間にもっと多くのことを学ぶべきだ」と言っていました。

また別の専門家からは、「なぜ外国人観光客は東京に来る前にもっと歴史を勉強しないのでしょうか? またどのようにして歴史について説明したらよいでしょうか」という声もありました。

ご想像のとおり、私はこれらの質問に答える前に考えなければなりませんでした。

世界が日本に関心を持つのはいいことかもしれませんが、ほとんどの観光客は勉強のために来ているわけではありません。ほとんどの観光客は、休暇を過ごすために来ているのです。

勉強熱心な学生のように彼らが振る舞わないことで、彼らに罪悪感を抱かせるのは「おもてなし」とは言えません。逆に、日本に来て良かったと思ってもらえれば、帰国後に日本について勉強する可能性が高くなります。

同じように、日本人が日本の文化を知らないことに罪悪感や恥ずかしさを抱いていると聞いたこともあります。ある講義では、聴講者の一人が「日本からの旅行者は、正しい説明ができるよう、出国前に着物や茶道を習ってパスポートにスタンプを押してもらうべきだ」と言っていました。

この本をここまで読んでくださった方には、私がこの意見にどれほど反対しているかは言うまでもないでしょう。

日本人に限らず、興味のないことを無理に勉強させるべきではないと思うだけでなく、お茶や着物について強制的に勉強をさせられた人が、果たして、それを誰かに説明したいと思うでしょうか。あなたはどうかわかりませんが、私は、自分が好きで勉強した日本のことなら人に話しますが、自分が嫌いなことは話しません。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏 、 ホルムズ海峡に多くの国が軍艦派遣と

ビジネス

イラン情勢注視続く、FRB金利見通しも焦点=今週の

ワールド

イスラエル、レバノンと数日内に協議へ ヒズボラと戦

ワールド

北朝鮮の金総書記、多連装ロケット砲の発射訓練視察=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目のやり場に困る」衣装...「これはオシャレなの?」
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革…
  • 5
    「筋肉はモッツァレラと同じ」...なぜウォーミングア…
  • 6
    機内で「人生最悪」の経験をした女性客...後ろの客の…
  • 7
    イラン攻撃のさなか、トランプが行った「執務室の祈…
  • 8
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 9
    ファラオが眠る王家の谷に残されていた「インド系言…
  • 10
    幼い子供たちの「おぞましい変化」を克明に記録...「…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 5
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 6
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 7
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 8
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 9
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 10
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中