最新記事
シリーズ日本再発見

日本の観光政策は間違いだらけ、「クールジャパン」の名称は自画自賛で逆効果だ

2023年01月12日(木)17時25分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
日本観光

写真はイメージです recep-bg-iStock.

<外国人からの意見で多いのは「クールジャパンという名称はおかしい」というもの。日本を愛し、内閣府公認クールジャパン・プロデューサーを務めるアメリカ人が指摘する、改善すべき点とは?>

ニューヨーク州生まれの国際コミュニケーション・コンサルタント、ベンジャミン・ボアズ氏は「クールジャパンのエキスパート」だ。

日本を愛し、2016年からは内閣府公認クールジャパン・アドバイザー、コロナ禍の2022年10月にはクールジャパン・プロデューサーに就任した。東京都中野区の観光大使を務め、国内外の大学でクールジャパンに関する講演も多数行ってきた。

しかしボアズ氏は、「世界が見ている『日本』と、日本が見ている『日本』は異なる」と指摘し、クールジャパン戦略には改善が必要だと考えている。そもそも、クールジャパンという名称がおかしい。

「海外の人たちからの意見の中で最も一貫しているのは、クールジャパンという名称そのものについての意見です。端的に言えば、『なぜ名前を変えないのか?』ということ。英語を母語とする者からすると、この政策名は自画自賛をしているように聞こえて、逆効果に思えます」

ボアズ氏は実際に、クールジャパン官民連携総会に参加した際、手を挙げて、クールジャパンという名称をもっと外国人にアピールできるものに変えられないのかと質問したこともあるという。

そんなボアズ氏はこのたび、コロナ後に日本が観光立国として復活するために、1冊の本を書いた。『日本はクール!?――間違いだらけの日本の魅力発信』(クロスメディア・パブリッシング)だ。

日本人視点の「マイ・ジャパン」から脱却し、海外視点の「ユア・ジャパン」で日本の商品・文化をPRすることの重要性をわかりやすく解説した同書から、一部を抜粋して掲載する(この記事は抜粋の第1回)。

※抜粋第2回:「なぜ外国人観光客は日本の文化を勉強しないのか」と聞かれたクールジャパン専門家は...

◇ ◇ ◇

ステップ(1)マイ・ジャパンを手放す

海外で日本がどのように見られているかということに関心があります。そうした日本人の自国に対する認識のことをマイ・ジャパンと呼ぶことにします。そのことを証明するように、海外での日本の魅力を紹介する国内向けのテレビ番組や、「クールジャパンアワード」「すごいジャパンアワード」といった賞もあります。

しかし、ほとんどの場合、これらはすべて、日本人が、日本語で、日本人にアピールするために作ったものです。外の世界に向けたものではありません。

これは必ずしも悪いことではありません。むしろ、このような取り組みによって、日本人がより多くの日本の商品を買い、より多くの国内観光をするようになれば、それは素晴らしいことだと思います。海外での反応を知ることで、日本人が自分の国をもっと好きになってくれれば、それに越したことはありません。

個人的には、このようなマーケティングを行わなくても日本は魅力的だと思いますが、私のような外国人が日本を愛していると聞いて、多くの日本人が日本を誇りに感じることを理解しています。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

物価動向の見極め必要、9月・秋の利下げ判断巡り=米

ワールド

ウクライナ住民、米ロ首脳会談控え警戒心

ワールド

米ロ会談、成果あればウクライナ交えた3者協議可能─

ワールド

ウクライナ大統領、ロシアの攻撃継続非難 「米ロ会談
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務処理めぐり「バッドバンク」構想で大論争
  • 4
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 5
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 6
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 7
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 8
    【クイズ】次のうち、「軍事力ランキング」で世界ト…
  • 9
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 10
    【クイズ】アメリカで最も「盗まれた車種」が判明...…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 6
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 7
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 8
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 9
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 10
    輸入医薬品に250%関税――狙いは薬価「引き下げ」と中…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失…
  • 6
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中