最新記事
シリーズ日本再発見

こんな素材からも和紙が出来る!? 未来に向けた日本初の和紙製グッズ

2022年09月12日(月)16時10分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部


循環型社会の実現に貢献する、小さな一歩として

sdgswashi202209-pic4.jpg

葉たばこの幹を乾燥させ、水で洗ってアクを抜き、煮詰める(上段・左から)。この「煮熟」が終わると、繊維を切りほぐしたり押しつぶしたりする「叩解」を経て、和紙の原料に(下段・左から) Photo:丸重製紙企業組合

葉たばこの幹を乾燥させ、水で洗ってアクを抜く。そして、それらを煮詰める「煮熟」という工程と、機械により繊維を切りほぐしたり押しつぶしたりする「叩解(こうかい)」の工程を経ると、和紙の原料となる。

丸重製紙企業組合の代表理事、辻晃一氏によれば、葉たばこの幹はバナナの茎などと比べても繊維質が丈夫で叩解に苦労したため、煮熟を丁寧に実施することで対応したという。

その後は、機械で和紙に抄き(冒頭の写真)、卓上カレンダー580部とA4ファイル約1000枚を製造した。使った幹は約330本。乾燥後の重量は約23.5キログラムだった。

完成した美濃和紙は、薄いクリーム色で、繊維質が残る模様が美しい。厚みがあり耐久性を備えながらも、柔らかな風合いを保ち、捨てられるはずだった葉たばこの幹から作られたとは思えない。

小さいながらも、廃棄物の排出量抑制など循環型社会の実現に貢献する一歩であり、美濃和紙の魅力と可能性を発信する取り組みでもある。

丸重製紙企業組合の辻氏は、「今後は、和紙を通じてより多くの葉たばこの幹のリサイクル量が増え、葉たばこの幹の焼却で発生するCO2の削減や、新規木材パルプの使用削減につなげること」で貢献していきたいと、展望を語る。

過去ではなく、未来へ。日本の伝統工芸品である和紙は、これからもその可能性を広げていくだろう。

japan_banner500-season2.jpg

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米、他の半導体企業への出資可能 他の産業に拡大も=

ワールド

「報道の自由への攻撃」、トルコがイスラエルのガザ攻

ビジネス

優良信用スコア持つ米消費者、債務返済に遅れ=バンテ

ビジネス

メルセデス・ベンツ年金信託、保有する日産自株3.8
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 2
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」の正体...医師が回答した「人獣共通感染症」とは
  • 3
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密着させ...」 女性客が投稿した写真に批判殺到
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 6
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 7
    アメリカの農地に「中国のソーラーパネルは要らない…
  • 8
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 6
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 7
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 8
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 9
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 10
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中