最新記事
シリーズ日本再発見

イタリアで日本文学ブーム、人気はエンタメ小説 背景にあの70年代アニメの存在

2021年06月25日(金)16時50分
栂井理恵(アップルシード・エージェンシー)

最後に、新型コロナウイルス流行で大変だったイタリアに暮らすスマレさんに、出版事情に変化があったかを尋ねた。

「最初の政府の指令で、数カ月、書店も含めて、全部のお店を閉めることになりました。書店と出版社にとって大変な事態で、パニック同然でした。一方、Amazonには商品の注文が殺到し、発送が追いつかず困っていたそうです。どうなるかとみんなが心配していましたが......その後、幸いにも本屋が再開し、売上のデータが届いたとき、驚いたことにとても良かったんです。イタリア人は、レストラン、映画館、劇場、コンサート、サッカー場に行けなくなり、無理やり家に閉じこもり、そのような娯楽は楽しめなかった。結果として、気晴らしに小説を読む人が増えたようです。今も出版事情はいいと思います」

海外では、本が刊行されると著者を招いてのオーサー・ツアーなど文芸イベントを開催することが多いが、もちろん現在は自粛傾向である。はやく平穏な日常が戻り、両国の作家や出版関係者たちが交流できる日が待ち遠しい。6月にイタリア・リンダウ社から日本文化にまつわるエッセイ集『知られざる日本への旅』(『Viaggio Nel Giappone Sconosciuto』)を出したばかりのスマレさんもそう願っている。
(取材・文:栂井理恵/アップルシード・エージェンシー


マッシモ・スマレ(Massimo Soumare')

1968年、イタリア、トリノ生まれの翻訳家、作家、監修者、エッセイスト、日本研究者。日本人の近現代作家の作品を数多くイタリア語に翻訳。作家として、作品が中国、日本、スペイン、スコットランド、アメリカでも翻訳出版された。2016年には、短編2作により、第24回Il prione国際文学賞及びMarguerite Yourcenar国際文学賞のファイナリストに選ばれる。また1編のエッセイにより、2016年Mario Soldatiコンクールのエッセイ・ジャーナリズム評論部門においてもファイナリストに選出された。トリノ市商工会議所日本語通訳・翻訳者、CentrOrienteセンター及びUniversita'Popolare di Torino日本語講師。

massimo_book.jpg『知られざる日本への旅』
 マッシモ・スマレ[著]
 リンダウ(邦訳なし)

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

※作家・柳美里さんを「日本人作家」と誤って表記した箇所がございました。正しくは韓国国籍であり、本記事では「日本の作家」「日本文学の書き手」という表現に修正致しました。お詫び申し上げます(2021年6月29日13時45分)

ニューズウィーク日本版 ガザの叫びを聞け
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月2日号(11月26日発売)は「ガザの叫びを聞け」特集。「天井なき監獄」を生きる若者たちがつづった10年の記録[PLUS]強硬中国のトリセツ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

OPECプラスが生産量据え置きを決定、27年以降の

ビジネス

野村HD、豪マッコーリーの米欧資産運用部門買収を完

ワールド

トランプ氏、マドゥロ氏との電話協議確認 空域発言は

ワールド

豪住宅価格、11月も最高水準 複数州都で大幅上昇=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業界を様変わりさせたのは生成AIブームの大波
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    メーガン妃の写真が「ダイアナ妃のコスプレ」だと批判殺到...「悪意あるパクリ」か「言いがかり」か
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    「世界で最も平等な国」ノルウェーを支える「富裕税…
  • 6
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 10
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中