最新記事
シリーズ日本再発見

ニューヨークのミシュラン和食屋料理長が明かす、アメリカ人の好み

2017年11月30日(木)21時30分
小暮聡子(ニューヨーク支局)

饗屋の料理長を務める園力(その・ちから) Satoko Kogure-Newsweek Japan

<日本料理店が乱立するニューヨークのマンハッタンで異彩を放つ人気店「饗屋(Kyoya)」の料理長が明かす、意外な現地事情と和食の極意>

和食ブームに沸くニューヨークにあって、舌の肥えたニューヨーカーたちを虜にしている和食屋がある。イーストビレッジに2007年3月28日にオープンし、今年10周年を迎えた「饗屋(Kyoya)」だ。

不動産価格の高騰や競争率の高さから数年で閉店する店も珍しくないマンハッタンで、オープン翌年に発表のミシュラン09年版で1つ星を獲得して以来、客を魅了し続けている。食通の日本人も足しげく通う人気店の舞台裏について、小暮聡子(ニューヨーク支局)が料理長の園力(その・ちから)に話を聞いた。

――客層はアメリカ人と日本人、どちらが多いのか。

日にもよるが、平均すると7対3でアメリカ人の方が多い。オープンした直後は100%日本人だった。

以前から店の宣伝はしていないのだが、開店して間もない頃にニューヨークの日本語フリーペーパーのライターさんが食べに来てくれて、辛口で有名なその方が良い記事を書いてくれた。そのフリーペーパーは日系の商社などにも配られるものだったらしく、掲載後に急に電話が鳴るようになった。2カ月後には、店の外にリムジンが10台くらい並んだこともあった。

記事がきっかけで、初めは日本人の駐在員さんやその奥様たちが来てくれるようになった。こうした方々が接待やビジネスディナーとしてアメリカ人のお客さんを連れて来てくれるようになり、一度来たアメリカ人たちも気に入ってくれて、一気に広がった。

――日本とは入手できる食材が違うなか、工夫している点は?

基本的には変えていない。正直言うと「あれがあればいいな」というものはあるが、手に入らないものを欲しいと言っても仕方がないので、ならばこっちで歩いて聞いて見て食べて、というのが自分の基本姿勢だ。

魚の仕入れは日系の魚屋さんとアメリカの魚屋さんをそれぞれ3軒ずつ使っていて、そこに注文すると信頼する日本人がブロンクス(ニューヨーク北部)のフィッシュマーケットに買いに行ってくれる。そのほかにも世界中から仕入れていて、オーストラリアや地中海、北欧からも来る。日本からは火曜から金曜まで毎日届く。

アメリカ国内でも各地から調達している。刺身の魚だと、例えばマグロは5月から10月まではボストンの本マグロを使っている。

個人的には太平洋マグロよりも大西洋マグロのほうが好きだ。大西洋マグロのほうがさっぱりしているが味が濃くて、得に赤身のうまみが良い。脂が乗っているトロでさえさっぱりしていて、普通だと2枚くらいしか食べられないところを4枚と食べられてしまうのが大西洋マグロの特徴だ。鉄分や酸味のバランスも良い。

japan171130-2.jpg

盛り付けの美しさにも職人技が光る「刺身の盛り合わせ」 Satoko Kogure-Newsweek Japan

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

新関税が1対1の置き換えなら影響軽微=米セントルイ

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、最高裁がトランプ関税に違法

ビジネス

FRB政策「適切な位置」、インフレ鈍化を予想=ダラ

ビジネス

米国株式市場=反発、大型株けん引 トランプ関税違法
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由...「落葉帰根」派も「落地生根」派も
  • 4
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 5
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 6
    中国政府に転んだ「反逆のアーティスト」艾未未の正体
  • 7
    ディープフェイクを超えた「AI汚染」の脅威──中国発…
  • 8
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 9
    「窓の外を見てください」パイロットも思わず呼びか…
  • 10
    生き返ったワグネルの「影」、NATO内部に浸透か
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 3
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 4
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 5
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 6
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 7
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 8
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 9
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 10
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中