コラム

創業者に見捨てられたツイッター?

2011年07月13日(水)13時41分

 今日発売のニューズウィーク日本版7月20日号(表紙はポツンと小さくなった菅首相)に、ツイッター・ファン(そしてアンチ・フェースブック派)にはとても気になる記事が載っている。「創業者たちが逃げ出すツイッターの内実」だ。

 この記事を読むまでは、正直言って創業者が4人いることさえ知らなかった。そのうち3人が、ツイッターの経営を投げ出そうとしているというのだから深刻だ。本誌テクノロジー担当のダニエル・ライオンズが、ライバルと比べた経営の実状や障害についてリポートしている。

 それによれば、共同創業者の一人、ビズ・ストーンは、ツイッターを生んだ元の起業支援ビジネスに戻る。おそらく「連続起業魔」を目指しているのだろう、と英フィナンシャル・タイムズ紙などは書いている。また昨年10月には、グーグル出身のディック・コストロが共同創業者のエバン・ウィリアムスに代わってCEOの地位に就いている。報道によればこの人事は、ツイッター人気を金に、ユーザー増を収入に換えることに経営の舵を切るためのものだという。

 一般のツイッター・ファンとしては複雑だ。利益を上げることより連続起業魔を目指すような創業者が経営していたからこそツイッターは自由だったのかもしれない。1年ほど前に使い始めてから、目立った新機能が追加されるわけでもなく、検索機能が強化されるわけでもなく、不便なものは不便なままだが、シンプルでオープンな使いやすさはずっと変わらなかった。

 これが、ありとあらゆる方法でユーザーと自社サービスの間に割り込み、あれしろ、これしろと指図して(最近では「お友達のAさんはこの質問に答えました。答えを知りたければあなたも質問に答えましょう」という余計なお世話の「チェーンQ&A」)、広告主に売るユーザー情報をあの手この手で集めようとするフェースブックのようになってしまったら、いくら利益が上がるようになってもそれはもはやツイッターとは言えない気がする。

 その辺は、実力派のライオンズがシリコンバレーでがっちり監視してくれるに違いない。
ライオンズは、かつて偽スティーブ・ジョブズとして書いたパロディ・ブログで一世を風靡し、フェースブックにはいち早く決別宣言をしたトレンドセッター。ツイッターの今後の成り行きも含めて、ニューズウィーク日本版でフォロー必至です。

──千葉香代子(本誌記者)

プロフィール

ニューズウィーク日本版編集部

ニューズウィーク日本版は1986年に創刊。世界情勢からビジネス、カルチャーまで、日本メディアにはないワールドワイドな視点でニュースを読み解きます。編集部ブログでは編集部員の声をお届けします。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英中部のシナゴーグで襲撃、3人死亡 ユダヤ教の神聖

ビジネス

米シカゴ連銀の新指標、9月失業率4.3%で横ばい 

ビジネス

アングル:米EV市場、税控除終了で崩壊の恐れ 各社

ビジネス

英企業の雇用意欲、20年以降で最も弱く=中銀月次調
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」してしまったインコの動画にSNSは「爆笑の嵐」
  • 4
    なぜ腕には脂肪がつきやすい? 専門家が教える、引…
  • 5
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 6
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 7
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 8
    イスラエルのおぞましい野望「ガザ再編」は「1本の論…
  • 9
    アメリカの対中大豆輸出「ゼロ」の衝撃 ──トランプ一…
  • 10
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 9
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 10
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story