6月23日、シンガポールでカジノ総合リゾート「マリーナ・ベイ・サンズ(MBS)」が正式に開業した(一部は4月に先にオープンしていた)。先に、南部セントーサ島にユニバーサルスタジオと共にオープンしていた「リゾートワールド・セントーサ(RWS)」に次いで2つ目になる。

 これでシンガポールのカジノ・リゾートが出そろった。観光客数の低迷に頭を悩ませた政府は、このカジノ事業に観光立国としての生き残りを懸けていた。MBSのトーマス・アラッシCEOは、月に7万人、年に1800万人の来場者を見込んでいると自信を見せている。

 香港のディズニーランドやマカオのカジノ建設ラッシュなど、アジア各国による観光客獲得競争に一歩遅れをとっていたシンガポール。法律を改正してまでカジノ開発に焦点をしぼったのは、経済的に好調な中国からの観光客を惹き付けたいという狙いがあった。

 この国家的なカジノ計画のはじまりは、カジノ管理法案がシンガポール国会を通過した06年2月に遡る。それまでカジノは法律で禁止されていた。

 政府が認可すると発表した2枠のカジノライセンスを巡り、カジノ大手19社が誘致計画などをプレゼンして競い合った。最終的には、まず06年5月にカジノ大手ラスベガス・サンズが、金融街近くのマリナ・ベイで、シンガポール史上初となるカジノ・リゾート開発のライセンスを獲得。そして同年12月には、マレーシアに拠点を置くリゾート開発大手ゲンティン・インターナショナルが、セントーサ島での国内2つ目となるカジノ・リゾート開発のライセンスを認められた。

■実はカジノに怯えるシンガポール

 ただカジノ建設を観光産業の起爆剤にしたいという思惑の裏で、政府は国内において大きなジレンマを抱えることになった。

 政府が望んでいるのはこんな光景だ。中国本土からの観光客でカジノフロアーは連日大盛況で、マカオ・カジノのように中国人ハイローラーが湯水のごとく大金を落とす。だがそこには、普通のシンガポール人の姿はどこにも見当たらない----。

 シンガポールでは過去にも何度か、カジノ建設案が浮上している。02年の経済審理委員会でも賭博施設の開発が検討されたが、リー・シェンロン財務相(現首相)は「(シンガポール国民に)ギャンブル依存症が増えるリスクがある。また、組織犯罪やマネーロンダリングにつながる」と主張。社会不安を引き起す可能性があり、シンガポールの徹底した統制社会への脅威、ひいては建国以来45年間続く人民行動党(PAP)体制の崩壊につながりかねないという警戒感を示して、建設を見送ったことがあった。(つづく

**カジノに懸けたシンガポール(2/2)

――編集部・山田敏弘

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