最新記事

鉄道

またも一帯一路の餌食になるか? マラッカ海峡をまたぐ鉄道建設構想が浮上

2022年9月12日(月)19時35分
大塚智彦
マラッカ海峡の夕焼け

マラッカ海峡に沈む夕焼け

<突然の巨大プロジェクト、財布のひもを握るのはやはり中国?>

東南アジアでまたしても巨大プロジェクト構想が明らかになった。マレーシア西海岸のマラッカとインドネシア・スマトラ島のドゥマイを結ぶ鉄道建設構想で、マレーシア・マラッカ州当局者が9月8日に地元メディアなどを通じて明らかにした。

この鉄道計画は両国の間に横たわるマラッカ海峡を越えなければならず、水深の浅い同海峡に海底トンネルを作ることは難しいものの海峡を跨ぐ橋梁か海底トンネルの建設を予定しているという。

構想ではスマトラ島リアウ州の港湾都市ドゥマイからスマトラ島を南下して最終的にはインドネシアの首都ジャカルタまでを結ぶ大鉄道網を計画しているという。

しかしこの夢のような建設構想は両国政府による正式の合意もまだで、巨額の建設費用や巨大橋梁の建設の難しさ、完工まで20年を予定していることなどから実現の可能性を疑問視する見方も出ている。

120キロの鉄道路線の大半は橋梁

これはマラッカ州の産業投資企業家育成委員会のアブ・ラウフ・ユソ委員長が明らかにしたもので、マラッカからドゥマイまでの約120キロに渡る鉄道建設計画で、その大半がマラッカ海峡を越える橋梁あるいは海底トンネルを鉄道が走ることになるという。

ただマラッカ海峡はインド洋から南シナ海、太平洋へと抜ける海上航路の要所であるだけにそこを跨ぐ橋梁の橋脚建設工事やトンネル工事によって国際船舶の運航にかなりの支障が出ることも予想されている。

マレーシア・マラッカ南方のシンガポールからドゥマイには定期船が運行され、途中の島々経由で約8時間がかかるほか、マラッカ・ドゥマイ間には本数は少ないが直行のフェリーも運行されている。

マレーシア側のマラッカ州マスジット・タナのテクト・ゴングからインドネシアのドゥマイを結ぶ鉄道建設構想は国境を越える国際鉄道となるため入国管理局や税関、検疫施設などを合わせて建設する必要がある。

さらにマレーシア側ではマスジット・タナ地域に2023ヘクタールもの新産業地域開発計画も持ち上がっており、大規模なインフラ整備となる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日産、追浜と湘南の2工場閉鎖で調整 海外はメキシコ

ワールド

トランプ減税法案、下院予算委で否決 共和党一部議員

ワールド

米国債、ムーディーズが最上位から格下げ ホワイトハ

ワールド

アングル:トランプ米大統領のAI推進、低所得者層へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」する映像が拡散
  • 4
    「運動音痴の夫」を笑う面白動画のはずが...映像内に…
  • 5
    MEGUMIが私財を投じて国際イベントを主催した訳...「…
  • 6
    配達先の玄関で排泄、女ドライバーがクビに...炎上・…
  • 7
    大手ブランドが私たちを「プラスチック中毒」にした…
  • 8
    米フーターズ破綻の陰で──「見られること」を仕事に…
  • 9
    メーガン妃とヘンリー王子の「自撮り写真」が話題に.…
  • 10
    コストコが「あの商品」に販売制限...消費者が殺到し…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」する映像が拡散
  • 4
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 5
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 6
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 7
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 8
    トランプ「薬価引き下げ」大統領令でも、なぜか製薬…
  • 9
    ヤクザ専門ライターが50代でピアノを始めた結果...習…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
  • 6
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 8
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 9
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 10
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中