最新記事

鉄道

またも一帯一路の餌食になるか? マラッカ海峡をまたぐ鉄道建設構想が浮上

2022年9月12日(月)19時35分
大塚智彦

総工費1兆円、中国の出方に関心

報道によればマレーシア、インドネシア両国は正式調印には至っていないが、鉄道建設に向けた基本的な調査を実施することでは合意に達しているとしている。

総工費は約1兆円を見込んでおり、両国政府の他に国際的な民間企業などの投資を求めている。

これまでのところ中国がこの計画に関与するとの情報はないが、国際的な大規模プロジェクトだけに今後中国が関心を抱いて、「一帯一路」構想の一環として乗り出してくるかどうか注目が集まっている。

ただマレーシアは2018年にマハティール元首相が率いる政党連合が同国史上初の政権交代を実現した直後、中国との東海岸鉄道の大規模プロジェクトを一端白紙化した経緯がある。仮に今回のマラッカ海峡のプロジェクトに中国が関心を示しても、中国への警戒感が残るマレーシア政府がそれを許容するかどうかも疑問が残るという。

相次ぐ巨大プロジェクト、東南アジア

今回明らかになったマレーシアとインドネシアを結ぶ鉄道建設構想の他にも東南アジアには巨大プロジェクトが目白押しだ。

インドネシアは首都ジャカルタをカリマンタン島東部の森林地帯を開発して新首都を建設して移転する計画が進行中で2045年の完全移転を目指している。 ただ資金面で困難に直面しており、中国が投資に乗り出そうとしているという。

また世界的な観光地であるバリ島に鉄道路線を建設する計画も浮上しており、ジャカルタと西ジャワ州のバンドンを結ぶ高速鉄道計画も中国の主導で工事が進んでいる。

インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は11月にバリ島で開催予定のG20会合に参加する習近平国家主席と同高速鉄道に試乗する予定とされ、一部路線はそれまでの完工を目指して現在急ピッチで作業が進んでいる。

マレーシアではマラッカ州の沿岸地区に大規模な経済回廊を作る計画が構想があり、マラッカ北部のタンジュン・クリンから沿岸部に33キロ、10117ヘクタールに及ぶ経済地区の建設を目指している。

さらにタイ北部のノーンカイとラオスのビエンチャンを結ぶ鉄道と道路橋の建設に関わる実現可能性の調査が始まっている。

2028年の完成を目指すこの橋はタイからラオスを経由して最終的に中国までを結ぶ交通網整備の一環とされ、すでにビエンチャンと中国国境までの鉄道は中国の支援で完成している。

こうした巨大プロジェクトには多額の資金が必要なこともあり、国際的な投資を呼びかけるなかで中国の入札、投資、参画の可能性がある。

各国は警戒感を抱きながらも「背に腹は代えられない」ことから中国資金の支援に頼らざるを得ないという「宿痾(しゅくあ=持病)」を抱えている。

【動画】中国が東南アジアの巨大プロジェクトを呑み込む

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

米安保戦略、ロシアを「直接的な脅威」とせず クレム

ワールド

中国海軍、日本の主張は「事実と矛盾」 レーダー照射

ワールド

豪国防相と東シナ海や南シナ海について深刻な懸念共有
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中