コラム

グローバルサウスがBRICS加入を目指す3つの理由──先進国で忘れられた70年の暗闘

2023年08月22日(火)14時20分

この状況を打開するため、77カ国の途上国(77カ国グループ)は結束し、国連総会で自由貿易の修正を求めた。南北間の外交戦の結果、先進国は1971年、途上国が求めていた一般特恵関税を受け入れたのである。

一般特恵関税は途上国製品に対する関税を先進国に対するものより低く設定するものだ。それは途上国製品の価格競争力を高めるが、厳密にいえば自由貿易のルールに反する。

それでも先進国が受け入れざるを得なかったこと自体、途上国の抵抗の強さを示した。

標準化圧力のクライマックス

こうした標準化圧力は冷戦終結後の1990年代、それまで以上に加速した。イデオロギー対立が終結し、アメリカが唯一の超大国になったことで、市場経済や自由貿易が「グローバルスタンダード」と扱われるようになったためだ。

しかし、グローバル化は大企業の税制優遇や非正規雇用の増加により、アメリカにさえ格差の拡大といった副作用ももたらした。

さらに先進国の一角を占める日本でも、アメリカ式企業経営(例えば株主資本主義など)の浸透に対する暗黙の拒絶反応は、経済界を中心に根強くある。

とすると、あらゆる経済活動の標準化が進むことに対して、より外圧に弱い立場の途上国で生まれる拒絶は推して測るべしである。

グローバルスタンダードという名の暗黙の圧力は、人権、民主主義などに関してもほぼ同じだ。

その内容の良し悪しにかかわらず、優位な立場の者が頭ごなしに言えば、拒絶反応を招くことは不思議でない。言う側である先進国がしばしば自分達を例外扱いにするダブルスタンダードがあるからなおさらだ。

「G7で性的少数者の権利保護が法的に定められていないのは日本だけ」と言われた時の政府・自民党や保守派の反発は、人権分野で欧米から批判された場合の途上国の反応と基本的に同じである。

こうした拒絶は、形こそ違えども企業買収などでも見受けられる。Twitterをイーロン・マスク氏が買収して以来、社員の脱出が進んだのは、社内文化をほぼ全否定する新たな経営者への拒絶反応の現れであり、能力などに自信のある人ほど出て行ったとみてよいだろう。

この観点からみれば、標準化の圧力にさらされる途上国・新興国のなかでも力のある国ほど先進国と距離を置こうとするのは当然ともいえる。

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

キオクシアHD株、東芝とベインキャピタル系が一部売

ワールド

香港警察、黎智英氏の評伝販売で書店関係者4人逮捕=

ワールド

韓国大統領、国防向け最先端航空技術への投資表明

ビジネス

米GM、韓国部門に6億ドル投資へ 工場近代化など
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆保険」を達成した中国の医療保険の実態とは
  • 2
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 3
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下位になった国はどこ?
  • 4
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 5
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 6
    意外と「プリンス枠」が空いていて...山崎育三郎が「…
  • 7
    スペイン王室、王妃と王女の装いに見る「母から娘」…
  • 8
    「有事の金」が下がる逆説 イラン戦争で市場に何が…
  • 9
    「買ったら高いじゃん?」アカデミー賞会場のゴミ箱…
  • 10
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 1
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 2
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 5
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 6
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 9
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 10
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story