コラム

「中国軍が元軍用機パイロットをリクルートしている」──西側に広がる警戒

2022年11月07日(月)18時15分

ニュージーランド国防省はすでに4人の元軍用パイロットがTFASAに就職していたと発表している。

カナダメディアの取材に対して、TFASAは「顧客の情報は明かせない」と断ったうえで、「カナダ人パイロットが行っているのは通常の基本的な飛行訓練であって、軍事訓練ではない」と答えたという。

情報戦とヘッドハンティング

中国への情報漏洩疑惑で逮捕される元軍用機パイロットもすでに出ている。

10月末、アメリカ軍の元パイロットがオーストラリアで逮捕された。逮捕されたダニエル・ドガンは退役後オーストラリアに渡り、航空ショーなどを行う会社を立ち上げる一方、2014年から中国にもオフィスを構えていた。

ロイター通信によると、北京のチャオヤンロードに登録されていたドガンの住所は、2014にカナダで逮捕された中国人企業家ステファン・スーのものと同じだったという。

スーはソフトウェア会社を経営する一方、アメリカ国防省にハッキングして軍事情報を引き出そうとしたとして逮捕され、後に有罪を認めた。

ドガンとスーの関係の詳細については不明で、オーストラリア当局にドガンは法に触れることはしていないと主張しているという。

オーストラリア警察によるドガン逮捕は、アメリカ政府からの要請に基づいている。アメリカ政府がオーストラリア政府にドガン逮捕を要請したのは、イギリス国防省の警告から1週間も経たない間だった。

こうした元軍用機パイロットをめぐる調査や取り締まりは、これまでのところ主に英語圏で行われているが、遅かれ早かれそれ以外の先進国にも波及するとみられる。それだけ中国のかかわる情報戦とヘッドハンティングは激しさを増しているのだ。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

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