コラム

ミャンマー軍政を揺るがすミルクティー同盟──反独裁で連帯するアジアの若者たち

2021年02月12日(金)16時40分

香港やタイに加えて、台湾の独立を求める若者も参加するこのネットワークは、東南アジアなどでポピュラーな、ミルク入りのスパイシーな紅茶にちなんで「ミルクティー同盟」と呼ばれる。

ミャンマーの若者たちもミルクティー同盟と結びつき、その手法を取り入れるなか、デモを拡大させてきたのだ。

シンボルとマニュアルの共有

ミルクティー同盟は単なるネット上での結びつきにとどまらず、ミャンマーの抗議デモにとって実践的な意味をもつ。

例えば、ミャンマーの抗議デモでは多くの参加者が三本の指を掲げる敬礼をみせているが、これはもともとタイでみられたものだ。そのおおもとは、2012年に公開されたディストピア映画「ハンガー・ゲーム」で登場人物が用いていたサインといわれる(もとの意味は感謝、称賛、愛する者との別れ)。

このようにポップカルチャーからヒントを得るのは、その良し悪しはともかく、現代の抗議デモでは珍しくない。その親しみやすさからミャンマーでは若者だけでなく、コロナ対策の防護服をまとった医療従事者も、厳格そうな僧侶や教師も、老若男女を問わず三本指を立てて連帯の意志を示している。

シンボルだけではない。香港からはミャンマーに抗議活動のマニュアルが渡っている。

香港デモの中心となった若者は、その経験から得られたノウハウをSNSで共有し、蓄積し、改良を重ねた。統一されたものではないが、何人もの活動家がそれぞれリコメンドしているものをあげていくと、例えば、

・催涙ガスや警棒に備えてヘルメット、ゴーグル、マスクは必需品
・警官に追跡されたときに逃れられるように着替えを用意しておくとよい
・簡単な食糧と水を用意しておく
・荷物を積めるのは、動きやすいようにバックパックにする
・活動の連絡・調整には(Twitterなどより規制の緩い)Telegramを使う
・匿名で情報を共有する際にはAirdropを使う
・逮捕された際にはiPhoneなどの顔認証を使用できなくする

こうしたマニュアルをビルマ語に翻訳し、SNSで共有した男性はロイターのインタビューに「近くの国で若者がどうやって政治に参加しているかがわかった。それが我々を後押ししている」と述べている。

中国はアジアを代表するか

ミルクティー同盟の参加者たちは基本的にそれぞれの国の独裁的な政府への抗議活動を続けているが、中国はその「共通の敵」と位置付けられている。香港はいうまでもないが、タイやミャンマーの軍事政権は政治的、経済的に中国の後ろ盾を頼みの綱にしているからだ。

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米CB消費者信頼感指数、2月は91.2に上昇 雇用

ワールド

ウクライナ大統領「独立守った」、ロ侵攻から4年 G

ワールド

米、重要鉱物価格設定にAI活用検討 国防総省開発

ビジネス

AIが雇用市場を完全に覆すことはない=ウォラーFR
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 6
    3頭のクマがスキー客を猛追...ゲレンデで撮影された…
  • 7
    「極めて危険」──ゼレンスキー、ロシアにおける北朝…
  • 8
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 9
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 10
    武士はロマンで戦ったわけではない...命を懸けた「損…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story