コラム

トランプ大統領のFRBへの政治圧力・利下げ要求は株式市場のリスクか?

2025年09月04日(木)06時00分

安倍政権の「成功体験」も影響しているだろう

FRBに対するトランプ政権の高圧的な対応は、金融市場の大きなリスクになるだろうか。

まず、トランプ政権は連邦政府へのリストラを行うなど行政機構改革を目指しており、FRBもこの対象に含まれていると考えられる。また、経済やインフレに大きな影響を及ぼすFRB執行部の人事は上院による議決が必要であるが、その時々のホワイトハウスの意向が影響する。

1970年代以降これまでに、ホワイトハウスとFRB議長の間に緊張関係が生じたケースはあり、現在は同様の状況ではある。こうした状況は久しぶりであるが、「未曾有の事態」とまでは言えない。

また、トランプ大統領は第一次政権の時から、自ら任命したパウエル議長の利上げ政策を批判していた。そして、2025年には関税引き上げという成長を妨げる政策を自ら行っているがゆえに、金融緩和による成長押し上げを要請している(関税の引き上げは誤った政策ではあるが)。

2025年初から利下げを見送り、「引き締め的な政策」を続けるパウエル議長の対応に、トランプ氏は不満を抱いているのだろう。

そして、トランプ政権の中央銀行への強権的な行動には、懇意だった故安倍晋三首相が日本銀行に2%インフレ目標をコミットさせて、審議委員人事に影響力を行使した「成功体験」も影響しているだろう。

アベノミクス発動により金融緩和を徹底させたことで日本経済を正常化させ、長期政権をも実現させた政治的な成果を、トランプ大統領とベッセント財務長官は正確に理解しているとみられる。

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

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