コラム

【2025年経済展望】期待しづらい中国、外部環境に脆弱な日本、2%成長が続く米国

2024年12月27日(金)11時40分

こうした中で、ショルツ内閣が政権を維持できずに2025年2月の解散総選挙となる見通しだが、厳格な債務拡大ルールの見直しを含めた財政政策が争点になるとみられる。可能性は高くないが、総選挙によってドイツの財政政策が変わるとすれば、ドイツの経済成長率は1%を超えるかもしれない。

日本銀行は冷静な判断で追加利上げの時期の見極めを

日本についてはどうか。中国への輸出割合が高く、また日本企業の中国ビジネスへの依存度はドイツよりも大きい。

このため、中国当局の不十分な対応が続いて停滞が続けば、日本経済へのマイナスの影響は大きくなる。外部環境がドイツよりも厳しくなるのだから、適切な財政金融政策を続けることが経済回復にとって必要になるだろう。

日本銀行は、2024年12月の金融政策決定会合において現状維持を決めた。日本経済は2024年にほぼゼロ成長に減速しており、需給ギャップがマイナスの状況での追加利上げは引き締め過ぎの失政となりかねない。日本銀行による政策金利据え置きは適切な判断だったと言える。

植田和男総裁らは、「オントラック」「実質金利が低すぎる」などの理由で2024年の秋口以降も追加利上げを模索してきたが、想定よりもインフレが上振れるまで追加利上げを見送るべきだろう。潜在成長率を超えて経済成長が続くことを待って、追加利上げを行う冷静な判断を続ければ、日銀は2%インフレの安定に成功する。

ただ、「もうワンノッチ(1段階)欲しい」などの植田総裁の発言を踏まえると、2025年1月会合にでも追加利上げが行われる可能性があり、筆者は2024年夏と同様の政策ミスを警戒している。

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

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