コラム

「トランプ現象」を掘り下げると、根深い「むき出しのアメリカ」に突き当たる

2016年03月11日(金)16時30分

「今も明日も、そして永遠に人種は隔離する」

 ウォレスは心の底から人種差別を信じていたわけではなく、あくまで政治の小道具にした節がある。当初は黒人の人権を守ろうとする進歩派の判事だった。ウォレスは知事選に出馬するが、人種差別を前面に押し出した候補に大敗し、現実の厳しさを味わう。「選挙に勝たなければ意味がない」と悟ったウォレスは一転、熾烈な差別のレトリックでアラバマ州の白人たちの情緒に訴えるようになる。演説で吠えるように声を張り上げ続け、アラバマ知事選で圧勝。就任演説で、
 「今も明日も、そして永遠に人種は隔離する」
 という決め台詞も放った。そのフレーズを考案したスピーチライターはKKKの正式メンバーだった。ウォレスはこの成功体験で深く学習してしまった。

ジョージ・ウォレスのスピーチ。「今も明日も、そして永遠に人種は隔離する」


 アラバマ州知事になったウォレスは公民権運動に猛反対する姿勢を貫く。1963年、ウォレスは2人の黒人学生ジェームズ・フッドとヴィヴィアン・マローンのアラバマ大学入学を阻止するために、大学周辺を州兵で固めて自ら大学の建物の入り口に立ちはだかった。それはパフォーマンスだった。

 ケネディー大統領が司法省幹部を特使として2人の黒人学生に付き添わせ、2人の入学を認めるよう求める大統領布告を読み上げるまで立ちはだかり、この様子を取材させるために報道機関をあらかじめ呼び寄せた。南部の有権者たちに向けて、「州の権利や州民の伝統的な生活様式を破壊しようとする連邦政府にたった一人で立ち向かう勇敢な知事」 というイメージをアピールしたのだった。このパフォーマンスはニュースとして全米に報じられた。

 注目されたタイミングを見計らってウォレスは1964年の大統領選に出馬。民主党側の予備選で公民権への反対を訴え、ジョンソン大統領と対決。予備選で敗退したが、南部の州で善戦した。

プロフィール

モーリー・ロバートソン

日米双方の教育を受けた後、1981年に東京大学に現役合格。1988年ハーバード大学を卒業。国際ジャーナリストからミュージシャンまで幅広く活躍。スカパー!「Newsザップ!」、NHK総合「所さん!大変ですよ」などに出演中。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米政府機関の一部が閉鎖、短期間の公算 予算案の下院

ビジネス

中国1月製造業PMIが50割れ、非製造業は22年1

ワールド

トランプ氏、労働統計局長にベテランエコノミスト指名

ワールド

焦点:トランプ政権、気候変動の「人為的要因」削除 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 2
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵士供給に悩むロシアが行う「外道行為」の実態
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 5
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパ…
  • 6
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 7
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 8
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 9
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 10
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story