36年ぶりに『台風クラブ』を観て、変化した自分と映画の本質を思い知る
ILLUSTRATION BY NATSUCO MOON FOR NEWSWEEK JAPAN
<台風が暗喩する非日常は、10代半ばの少年少女にとって日常だ。日常が非日常を覆い隠す直前の数日を映画は鮮やかに描く>
長谷川和彦監督の伝説的な映画『太陽を盗んだ男』にワンカットだけ出演したことは、昨年の本誌1月12日号に書いた。待機時間を入れても午前中いっぱいくらいの現場体験だったけれど、僕を呼んだ制作進行(当時)の黒沢清から紹介されたチーフ助監督が、何やかやと気を遣ってくれたことを覚えている。
小柄でひげ面。どちらかといえば寡黙。でも細やか。ディレクターズチェアにどっかりと座った長谷川監督がイメージどおり豪放磊落(らいらく)な演出をしていたから、この業界にもいろんなタイプがいるんだな、と思ったことも記憶にある。
そのチーフ助監督は、翌年の1980年に『翔んだカップル』で監督デビューを果たす。相米慎二だ。さらに81年には『セーラー服と機関銃』で興行的な成功を収め、83年の『魚影の群れ』を挟んで、85年に『台風クラブ』を発表した。
本作のカット割りは最小限。基本はワンシーンワンカット。寄りはほとんどない。つまり引きが多い。照明はぎりぎりまで自然光。暗い。そして遠い。だから俳優の表情は分かりづらい。
ならば芝居はアバウトになるはずだ。そう思いたくなるが、現場で相米は俳優たちをサディスティックなまでに追い込むことが普通だったという。ワンシーンのテストだけで、まる1日どころか2日かけたとの逸話もある。
夜のプールサイドで水着姿の女子中学生たちが踊り狂う冒頭のシーンも含めて、映画を支配するのは未成熟な狂気だ。経験を積めば予想できるはずの因果や展開が、10代半ばの少年少女には分からない。自分の感情をコントロールできない。常に現在進行形なのだ。
だから時として取り返しのつかないことをする。台風が到来する直前の胸騒ぎが、中学生たちの内面からあふれる狂気と同調する。台風が暗喩する非日常は、この時期の彼らにとって日常だ。でも彼らはやがて大人になる。日常が非日常を覆い隠す。その直前の通過儀礼である数日を、映画は鮮やかに描いている。
いっぱしの映画青年を気取っていた時期だからこそ、モンタージュなど映画の作法をアバンギャルドに否定する『台風クラブ』は衝撃だった。ただし補足するが、カットのモンタージュは少ないがシーンのモンタージュは見事だ。教師も含めて多くの主人公がパラレルに、それぞれのストーリーを紡ぐ。例えて言えば、句読点の位置が独特なのだ。
......ここまでは、20代後半の時期にこの作品を観たときの感想。当時の記憶を振り絞りながら書いた。このレビューを書くために、DVDでもう一回観た。
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