コラム

36年ぶりに『台風クラブ』を観て、変化した自分と映画の本質を思い知る

2022年03月03日(木)10時50分

観終えて今、ちょっと啞然としている。印象がずいぶん違う。輝きがない。当時は共感できたカットに自分がシンクロできない。置き去りにされたような感覚だ。36年の年月で何が起きたのか。

もちろん映画は変わっていない。変わったのは僕だ。年月の堆積が感覚を摩耗した。あるいは研磨されることで鋭くなった。

おそらくこれは映画の本質のひとつ。見方が固定されていない。20年後くらいにもしも観たら、また違う感想を持つかもしれない。

magmori220303_taifu.jpg『台風クラブ』(1985年)
監督/相米慎二
出演/三上祐一、紅林 茂、松永敏行、工藤夕貴

<本誌2022年3月1日号掲載>

プロフィール

森達也

映画監督、作家。明治大学特任教授。主な作品にオウム真理教信者のドキュメンタリー映画『A』や『FAKE』『i−新聞記者ドキュメント−』がある。著書も『A3』『死刑』など多数。

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