コラム

党大会を控え、中国No.1トーク番組が終了(習近平「検閲」続報)

2017年09月19日(火)19時19分

このところ、10月18日から始まる十九大(中国共産党第19回党大会)を控えて、中国の検閲はかつてない次元にまで強化されている。

スマホ向けメッセージアプリ「微信」(ウィーチャット)のグループチャット機能に対する取り締まりもそうだ。新たな規定ではグループチャット内の発言については、チャットを主催した管理人がすべての責任を負うことになっている。

私もファンが集うグループチャットを主催しているが、参加者数は5000人近い。彼らの発言すべてに責任を負うことなどとてもできそうもないし、問題発言がないか監視することも難しいと途方に暮れている。

【参考記事】中国SNS最新事情 微信(WeChat)オフィシャルアカウントは苦労の連続!

先日、ある中国メディアが10日間にわたり私を密着取材した。その際、中国の検閲について意見交換したが、「大変だけど仕方がない。逆らえばクビどころか逮捕されてしまうんですから。今は我慢するしかないです」と、諦めの境地だった。ただし不満はたまっているようで、ひとたびたがが外れれば爆発するかもしれない。

時代に逆行した音声だけのコンテンツが流行る理由

検閲強化に拍車をかけているのが、「えっ? 中国共産党が北ミサイルより恐れる『郭文貴』を知らない?」で紹介した郭文貴の存在だ。米国で政治亡命を申請している大富豪にして、次々と中国共産党内部の汚職に関するリークを連発している注目の人物である。彼のリークはYouTubeで発信される。ネット検閲により通常は中国国内では視聴できないが、興味を持つ人々はさまざまな手段を通じて視聴している。

その中でも主流の手段は、実は音声ファイルだけを共有する手法だ。動画と違って音声ファイルならば容量が小さいため、SNSやメールなどさまざまな手段でシェアすることができる。数が多すぎて当局も検閲しきれないのだ。

ちなみに中国で視聴できる「鏘鏘3人行」も、ネット上で音声版が流通している。動画のほうが楽しめることは間違いないが、トークショーなので音だけでも内容は分かる。コンテンツがどんどんリッチになっていくこの時代に、中国では時代に逆行した音声コンテンツも静かに流行しているというのは面白い話ではないか。

かくいう私も、中国で有料のウェブラジオ番組を始めることとなった。蜻蜓FMというウェブサービスだ。

蜻蜓FMでは、中国各地のラジオをネット経由で聞くことができるほか、ビジネス本や小説の読み上げ、著名人の個人ラジオを配信している。一部コンテンツは有料だ。無料の動画コンテンツがあふれている時代にもかかわらず、お金を払ってでも意義のあるコンテンツを聴きたいという需要が高まっているのだ。

すでに予告編を収録したが、私はそこで「日本に来て30年、いろいろな体験をしてきました。その全てをお伝えします。違法な話はできませんが、擦辺球を狙っていきます」と宣言した。

中国のサービスなのでもちろん話せないことはあるが、音声メディアにはテレビほどの規制はないだろう。「鏘鏘3人行」で鍛えられた私のトークを別の形で発信していくことになる。

発信者と検閲はいたちごっこだ。政府がどんなに規制を強化しても、真実を求めるニーズがあるかぎり、必ずや新たな手段が登場してくる。私も自分に与えられた場所で、できるかぎりの声を上げ続けていくつもりだ。

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プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

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