コラム

いま中国の企業家や投資家が知りたい3つのこと

2016年11月22日(火)15時43分

中国人の興味その3:異国で成功する秘訣

 最後に「異国で成功する秘訣」だ。中国の企業家たちが今、一番関心を持っている問題が海外進出。習近平総書記による「一帯一路」の大号令の下、ブームとなっている。しかし、海外での成功は容易ではない。技術があるだけ、金があるだけではうまくいかないのだ。中国の海外進出ブームはまだ始まったばかりで、ノウハウは蓄積されていない。痛い目をみた企業家たちがごまんといるわけだ。

 そこに現れたのが私、李小牧だ。身ひとつで東京に乗り込み、自分の店を持ち、選挙に出馬できるほどの信頼を得る。このノウハウをどうしても知りたいのだろう。

 私がいつも強調するのは「接地気」の重要性だ。「接地気」とはここ数年、中国で流行している言葉で、「お高くとまっているのではなくて、一般市民の中に分け入り、その感覚を理解しなさい」という意味である。「中国共産党の幹部たるもの、大衆の心を知るべし」というふうに使われる。政治のみならず、ビジネスの世界でも重要だ。

 聞いた人は「接地気? 何を当たり前の話をしているんだ......」と思うだろう。だが、言うは易しだ。成功体験があり、うなるほどの金を持っている中国人企業家はついつい現地の習慣や文化をバカにしてしまいがちだ。自分の物さしで見れば愚かとしか思えないことでも、現地の人々がやっているのならばきっとなんらかの意味を持っているはず。スティーブ・ジョブズよろしく「Stay Foolish」(バカであれ)の精神を抱いて、愚直に現地の習慣を模倣してみるべきだ。

 私が事例としてあげたのは、選挙での街頭演説だ。選挙期間中、私は毎朝、駅前に立ち続けた。通勤時間だけに足を止める人はほとんどいない。誰一人聞いていない時もあった。それでも私は演説をやめなかった。まずはやってみよう、やってみないと本当にばかげた行為なのかどうかはわからないと思ったからだ。実際にそうだった。演説を続けるうちに人々の反応は変わってきた。私も道行く人々のムードがわかるようになっていた。街頭演説の体験を交えた私の講演には盛大な拍手が寄せられた。

李小牧人気の秘密は......

 さて、起業家相手に大ウケした講演について取り上げたが、ここから"李小牧人気"の秘密が見えてくるのではないか。

 第一に、中国人が知りたがっていることを伝えるという点だ。私は「民主主義ってなんだ?」「神秘の国・日本の凄さ」「異国で成功する秘訣」について伝えた。第二に、具体的な体験やエピソードを交えることだ。抽象的ないい話なら誰でもできる。自分の血肉となった話でしか人は感動させられない。第三に、客観的な視点から好奇心を持って社会を掘り下げて観察することだ。私は日本に渡って以来、ずっとそれを心掛けてきた。

 この3つができれば、あなたも中国で人気の言論人になれるのではないだろうか。

※関連記事:美しいビーチに半裸の美女、「中国のハワイ」にまだ足りないもの

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

パキスタンとアフガン、即時停戦に合意

ワールド

台湾国民党、新主席に鄭麗文氏 防衛費増額に反対

ビジネス

テスラ・ネットフリックス決算やCPIに注目=今週の

ワールド

米財務長官、中国副首相とマレーシアで会談へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「実は避けるべき」一品とは?
  • 4
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心…
  • 5
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みん…
  • 6
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 7
    自重筋トレの王者「マッスルアップ」とは?...瞬発力…
  • 8
    「中国は危険」から「中国かっこいい」へ──ベトナム…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 5
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 6
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 7
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 8
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 9
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 10
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story