コラム

「ソ連崩壊後のロシア」と同じパターン...東南アジアで「サイバー犯罪大国」化が進む理由

2025年02月19日(水)16時52分

サイバー犯罪者がインドネシアを狙う地政学的な理由

インドネシアは人口が多く経済的潜在力も高いことから、地域および世界的な地政学において重要な役割を担う。地政学的な動機を持つサイバー攻撃グループは、国家間の競争で優位性を獲得したり、地域の安定を乱したり、情報を収集したりするためにインドネシアを攻撃している。

サイバー攻撃でも特に多いのは、ランサムウェア攻撃。その数は東南アジア全域で急増しており、企業と個人の両方を標的になっている。犯罪組織は戦術を洗練させ、高額の身代金を要求することが多く、大きな財務リスクと運用リスクをもたらしている。

冒頭のインドネシアのランサムウェア攻撃ケースは、インドネシアにとっても過去最大級の攻撃だったと言える。これまで例えば、2022年には中央銀行がランサムウェアの攻撃を受けている。ただ当時、国内のほかの公共サービスには影響は出なかった。また2021年には保健省の新型コロナウィルス関連アプリがハッキング被害に遭い、130万人の個人データと健康状態が流出する事件が起きている。

インドネシアはこれまでサイバーセキュリティ対策への投資が少ないと報じられてきた。ただそんなインドネシアは、サイバー攻撃対策を強化に動き始めている。

プロフィール

クマル・リテシュ

Kumar Ritesh イギリスのMI6(秘密情報部)で、サイバーインテリジェンスと対テロ部門の責任者として、サイバー戦の最前線で勤務。IBM研究所やコンサル会社PwCを経て、世界最大の鉱業会社BHPのサイバーセキュリティ最高責任者(CISO)を歴任。現在は、シンガポールに拠点を置くサイバーセキュリティ会社CYFIRMA(サイファーマ)の創設者兼CEOで、日本(東京都千代田区)、APAC(アジア太平洋)、EMEA(欧州・中東・アフリカ)、アメリカでビジネスを展開している。公共部門と民間部門の両方で深いサイバーセキュリティの専門知識をもち、日本のサイバーセキュリティ環境の強化を目標のひとつに掲げている。
twitter.com/riteshcyber

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